不登校を生まない学校づくり考えて 書籍で実態など紹介 スクールカウンセラーの蔭山さん(静岡)

 国語教師として静岡高などで教壇に立ちながらスクールカウンセラーを務め、退職後も悩みを抱える子どもに寄り添う静岡市葵区の蔭山昌弘さん(75)が、この2年間に自費出版した2冊の書籍で、不登校で苦しむ子の実態や、周囲の人たちの関わり方を伝えている。不登校の児童生徒数は年々増加する一方、現場の多忙化によって一人一人への細やかな対応は困難を極めている。蔭山さんは「不登校となる児童生徒を生まない学校づくりを皆で考えてほしい」とメッセージを送る。

不登校の子どもの実態を説明する蔭山昌弘さん=静岡市葵区
不登校の子どもの実態を説明する蔭山昌弘さん=静岡市葵区

 蔭山さんは、初任地の池新田高(御前崎市)で相談室の設置に関わったことをきっかけに、精神分析を学び始めた。1996年には城内カウンセリング研究会を立ち上げ、カウンセラーの養成や学習会を開始。2007年に公立高教員を退職後、現在も静岡高と静岡雙葉中・高でスクールカウンセラーを務める。
 書籍は「聴く・寄りそう・そして」と、ことし8月に発刊した続編の「『回復』 無意識からの声を聴く」。突然言葉が出なくなった男子高校生と、回復への道筋を一緒に考える教師を中心にした物語。登場人物は過去に対応した生徒らがモデルになっていて、内容も実際に即している。
 これまでに蔭山さんが相談に応じたのは6千人を超える。近年の事例から「社会において、勉強や受験の価値が高くなっている」とみる。SNS(交流サイト)の普及も相まって「子どもたちは他者からの見られ方を気にして、親を含めた周囲の人たちや自分自身が抱く理想に対して不安になっている」。こうした相談に対しては「理想」がつくられた過程を丁寧に解きほぐし、本人がどうありたいかを考えられるよう導くという。
 子どもたちの悩みに向き合うべき教員の多忙化にも危機感を募らせている。国が、子どもや保護者の相談に応じる専門職として、教育現場へスクールカウンセラーの配置を進める中「担任が不登校の子への対応方法を学ぶ機会がないだけでなく、クラスの中に『なんとかしなければ』という熱気が生まれにくくなっている」と指摘。「小学校からの教育の在り方を見直し、教師が時間的、精神的ゆとりを持てるようにすべき」と話した。
 「聴く―」は1200円、「『回復』―」は1300円。問い合わせは蔭山さん<電054(247)9436>へ。

 <メモ>文部科学省は、対人関係のトラブルなどで1年間に30日以上欠席することを「不登校」と定義する。2021年度に全国の小学校で不登校となった児童は全体の1.3%に当たる8万1498人、中学校は5%の16万3442人で、いずれも過去最多となった。高校は1.7%の5万985人だった。

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