代償措置に静岡県反発 リニア国交省会議 「保全あり方」資料了承

 都内で20日に開かれたリニア中央新幹線トンネル工事に伴う南アルプスの環境への影響を議論する国土交通省の第6回専門家会議では、JR東海が今後示す環境保全のあり方として植物の移植などの代償措置を含むとした資料が了承されたことに県が反発した。県は残土置き場のあり方についても、県有識者会議の専門部会で議論が続いているにもかかわらず、同日の専門家会議ではJR東海が示した計画を基に環境への影響を議論すると決まったことに不満をにじませた。

 事務局の同省鉄道局が示した論点案は、保全措置のあり方としてまずは影響の回避・低減策を検討し、対応しきれない場合は代償措置を検討するとした。森貴志副知事は「安易に代償措置ありきにならないように(議論を)進めてもらいたい」と求めたが、中村太士座長(北海道大教授)は「頑張ってその方向を向きたい」と述べてやりとりを引き取り、表現の変更には言及しなかった。
 JR東海の宇野護副社長は会議後の取材に「(環境の)改変はできるだけ小さくするが、最終的に代償するというのは県ごとに行われている」と説明し、理解を求めた。
 残土置き場については、増沢武弘委員(静岡大客員教授)が県の専門部会で議論が続いていることから扱いを問題提起したが、事務局の同省鉄道局が「事業主体であるJR東海が出した計画を考えてもらいたい」と述べ、了承された。
 自然由来の重金属を含むトンネル残土を大井川上流部の藤島沢近くに存置するJRの計画を、県は県盛り土規制条例を理由に認めていない。県の織部康宏理事は会議後の取材に「(県の)専門部会できちんと議論して、(国交省の)専門家会議に情報提供したい」と話した。

論点案に異論出ず 保全措置、議論へ
 国土交通省の第6回専門家会議では、事務局の同省鉄道局が地下水低下に伴う沢の水生生物への影響など今後議論する3項目をまとめた「論点案」が議論された。委員から大きな異論は出ず、鉄道局の担当者は「おおむね了承された」との認識を示した。次回以降、JR東海が論点に基づき環境への影響を分析した資料を提出し、保全措置の議論に移る。
 委員からは、沢の流量や水生生物に与える影響について、影響が懸念される全ての沢を調べるのではなく、最も影響が大きい沢を類型化して調べる手法などが提案された。
 一方、県の森貴志副知事は会議後の取材に「まだ論点整理の段階だ」と述べ、丁寧な議論を求めた。2023年1月にも県有識者会議の生物多様性専門部会を開催し、これまで県がJR東海に求めていた環境保全の観点が盛り込まれているか検証するとした。
 論点案では、沢の水生生物への影響のほか、高標高部の植生への影響と、大井川に放流するトンネル湧水や残土置き場など地上部分の改変箇所の影響を調べるとした。

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