ジャズピアニスト・上原ひろみさん(浜松出身)デビュー20年 心はずっと故郷・浜松に

 浜松市出身で世界的なジャズピアニスト上原ひろみさん(43)が2022年末、新型コロナウイルス禍による音楽業界の救済を目的に日本国内で行った公演を、同市で締めくくった。自粛生活、公演の延期や中止…。どんな状況下でも「希望の光がある」と模索し続けた約3年。今年デビュー20周年を迎え、「常に恩返しの気持ちがある」と故郷への思いを口にする。

故郷の浜松で演奏を披露する上原さん
故郷の浜松で演奏を披露する上原さん
新型コロナウイルス禍の音楽活動を振り返る上原ひろみさん=2022年12月下旬、浜松市中区のアクトシティ浜松(浜松総局・二神亨)
新型コロナウイルス禍の音楽活動を振り返る上原ひろみさん=2022年12月下旬、浜松市中区のアクトシティ浜松(浜松総局・二神亨)
故郷の浜松で演奏を披露する上原さん
新型コロナウイルス禍の音楽活動を振り返る上原ひろみさん=2022年12月下旬、浜松市中区のアクトシティ浜松(浜松総局・二神亨)

 「帰ってきたに。私の心の住民票はずっと浜松にあるから」
 公演冒頭、遠州弁で観客に語りかけた上原さん。「どこへ行っても、浜松のように駅に降り立った時に安心する場所はない。生まれ、育ててもらった地で演奏できるのは幸せ」と話す。
 コロナで一時帰国した20年春、長年出演するジャズクラブ「ブルーノート東京」は、海外アーティストの公演が軒並み中止となっていた。そこで自ら企画したのが「SAVE LIVE MUSIC」と銘打った公演。「『(海外の出演者が)キャンセルになった日は全部私が弾きます』と伝えた。今を乗り越えなくてはと必死だった」。収容人数を4割に抑えるなどし、まずは完全ソロで16日間32公演を駆け抜けた。状況を鑑みながら、共演者を加えて各地でも行った同タイトルの公演は約2年半で116回に達した。
 声をかけたバイオリン奏者の意欲に後押しされ、弦楽四重奏との共演という新たなプロジェクトも生まれた。その際制作した曲にはコロナ禍での心境を投影。「これまで全ての人に共通する作品を書いたことがなかった。ライブで演奏すると、かつてないほどの共感を得られ、曲が完成したと思えた」
 コロナによる制約が徐々に緩和され、3年前に購入したチケットを手に会場を訪れる人や、東京五輪の開会式での演奏を見て楽しみにしていたと話す人に会った。「ピアノを弾かせていただけること、ライブに足を運んでいただけることに感謝しながら、まだ見たことのない景色を探し求めたい」とさらなる意欲を見せた。 

 うえはら・ひろみ 1979年生まれ。6歳でピアノを始め、同時に作曲を学ぶ。浜松北高を卒業し、名門米バークリー音楽院在学中の2003年、アルバム「アナザーマインド」で世界デビューした。11年のグラミー賞で、参加したバンドのアルバムが最優秀コンテンポラリー・ジャズ・アルバム賞を受賞。21年の東京五輪では開会式で演奏を披露した。

 

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞