浜松ホトニクス社長/丸野正氏 レーザー売上高10倍に【難局に挑む 新年トップインタビュー⑥】

丸野正氏
丸野正氏

 ―現状の景況感は。
 「2022年9月期の連結決算で売上高が初めて2千億円を超え、経常利益、純利益とも過去最高を達成した。世界情勢が不安定な中で、よく成長できた。中国とアメリカで半導体製造工場の建設ラッシュが起こり、検出器の需要が急激に伸びた。電気自動車(EV)の普及でリチウムバッテリーの検査向けも製造が追いつかないほどだ。医療用向けの需要も高まった。ただ、現在は受注残が高止まり傾向にあり、動向を注視している」
 ―25年9月期までの3年間で計画している1千億円超の設備投資の目的は何か。
 「多くは半導体製品の生産増強に充てる。現在はフル稼働に近い状況で工場は操業している。今後、需要は踊り場を迎えると思うが、乗り越えた後に再び成長すると想定している。自動運転車に使われるセンサー向けもターゲットの一つで、これから急激に伸びると予測する」
 ―製品を組み合わせるモジュール化に力を注ぐ戦略の狙いは。
 「例えば、単体で1万円ほどの製品を冷却装置などに組み込んでモジュールにすると、販売価格は100万円と2桁ほど上げられる。高度な技術が必要のため、コピー品対策にもなる取り組みだ。扱いが難しい製品をスタートアップも使いやすくなる。ただ、モジュール強化には社内の連携が欠かせない。事業部を統括して付加価値の創出を進める」
 ―3月に買収するNKTフォトニクス(デンマーク)の展望は。
 「レーザー光を増幅する独自技術があり、光源の分野で相乗効果が期待できる。レーザー事業は現在は30億円規模の売上高だが、10年で1桁上げられると見込んでいる。医療や量子コンピューターに加え、半導体製造過程の加工でもパワーのある安定したレーザーが必要だ。買収を完了次第、長年続けてきたレーザー核融合でも一緒に研究をしようと話を進めている。増えてきた優秀な研究者を現地に送り、交流の活発化を図りたい」

 まるの・ただし 1983年入社。常務、代表取締役専務を経て22年12月から現職。磐田市出身。62歳。

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