ロゲイニング 地域防災に活用 ゲーム感覚で避難訓練 静岡大防災総合センター副センター長/村越真氏【本音インタビュー】

 昨年9月の台風15号のような大規模災害への備えと命を守る行動が求められる中、オーストラリア発祥のスポーツ、ロゲイニングを地域の防災活動に活用する「防災ロゲイニング」を先月、静岡市駿河区川原地区で初めて実施した。狙いや今後の展望を聞いた。

村越真氏
村越真氏


 -防災ロゲイニングとは。
 「ロゲイニングは地図上に示されたチェックポイントを制限時間内に探し、合計点を競う競技。その競技特性を防災教育に生かせないかと、2013年に当時静岡高の地学教諭だった美沢綾子氏が高校生向けに提唱したフィールドワークが発端となった。使用する地図にハザードマップを組み込むことで、日常の生活圏に潜む自然災害のリスクを認知し、予防対策を取ることができる。得点獲得というゲーム要素によって中高生など幅広い世代の参加を促しやすく、楽しく健康に防災を学習できるのが特徴だ」
 -チェックポイント設置の考え方は。
 「川原地区では、特に地域の中学生に避難行動で知ってほしい場所を選定した。公園や津波避難タワーはもちろん、中日本高速道路との協定で実現した東名高速道ののり面など意外なところが避難場所になっていることが分かってもらえたと思う。域内に点在する防災倉庫にどんな物が入っているかの確認もした。今回は自治会と相談した上で運営側がコース設定したが、今後は生徒自身がポイント選定することができれば、より地域に対する問題意識が顕在化し、『自分ごと』として理解しやすいと思う」
 -リスクマネジメントの観点から見た意義は。
 「被災するリスクを下げるためには『認知』『分析』『評価』の3ステップが重要。参加者は実際に歩くことで、地形や具体的な距離感など、その土地ならではの情報を収集する。実体験として危険箇所を把握し、いざという時のために実践的な対策を考えることができる。さらにロゲイニングを採り入れることで、制限時間内に戦略を構築し意思決定していくため、判断力の向上にもつながる」
 -今後の展開予定は。
 「来月に静岡市葵区大川地区で第2弾を計画している。中山間地なので沿岸部とは想定される災害が変わってくる。参加者の声などを知見として、地域の防災力強化の一助に有効活用していきたい」

 むらこし・しん 2016年から現職。専門分野は認知心理学。日本のオリエンテーリングの第一人者で、読図やリスクマネジメント、山岳遭難対策などの講習を通じて研究結果を役立てようと取り組んでいる。静岡市生まれ。62歳。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞