現代美術家集団「幻触」と鈴木慶則さんを語る 本阿弥さん(静岡)、峯村さんが対論

 1960年代末から70年代初頭にかけて活動し、全国から注目を集めた静岡市などの現代美術家の集団「グループ幻触」と、その中心的存在だった鈴木慶則さん(1936~2010年)を語るトークイベントが、東京都中央区銀座のギャラリーQで開かれた。同ギャラリーの40周年記念展「鈴木慶則-石子順造と歩んだ世界」の関連企画。

グループ幻触と鈴木慶則さんが現代美術界に与えた影響について語り合う本阿弥清さん(左)と峯村敏明さん(中央)。右は上田雄三さん=東京都中央区のギャラリーQ
グループ幻触と鈴木慶則さんが現代美術界に与えた影響について語り合う本阿弥清さん(左)と峯村敏明さん(中央)。右は上田雄三さん=東京都中央区のギャラリーQ
鈴木慶則さん
鈴木慶則さん
グループ幻触と鈴木慶則さんが現代美術界に与えた影響について語り合う本阿弥清さん(左)と峯村敏明さん(中央)。右は上田雄三さん=東京都中央区のギャラリーQ
鈴木慶則さん

 グループ幻触を研究する美術評論家本阿弥清さん(静岡市清水区)と、多摩美術大名誉教授の峯村敏明さんが対論した。同ギャラリーのディレクター上田雄三さん(旧清水市=現静岡市清水区=出身)が司会を務めた。
 本阿弥さんと峯村さんは幻触のメンバーの主な作品をたどりながら、旧清水市を拠点に彼らと活動した評論家石子順造さん(1928~77年)や現代美術の潮流「もの派」との関係を論じた。
 峯村さんは、鈴木さんが60年代に発表したアルチンボルドらの西欧名画を素材にだまし絵技法で制作した作品群について「視覚批判の仕事として、出るべくして出てきた非常に鋭い仕事だった」と評価。一方で後年の「水絵」シリーズは「もの派」の代表的作家李禹[リウ]煥[ファン]さんからの影響を指摘し「李さんの言葉を完全に誤解した。絵画唯物主義に落ちてしまった」と断じた。
 本阿弥さんは鈴木さんを「『幻触』で一番有名だった。絵画と彫刻という西洋美術の王道の中で1960年代に一つのスタイルをつくった。石子さんとは一番深く、長く交流を持った人」と紹介した。68年に東京で開かれた、幻触も参加した「トリックス・アンド・ヴィジョン」展を「戦後史の中で重要な展覧会」と規定。「だまし絵という形で鈴木さんが代表したものを破壊しよう、乗り越えようとして生まれたのが『もの派』」と語った。地方から先鋭的な作品を発表した幻触に関し「50年前にこういう連中がいたことを記憶してもらいたい」と願いを込めた。
 展覧会は21日まで。1960年代の「非在のタブロー」や80年代以降の「ウォーターエッジ」など約20点が出品されている。

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