浜松発のエンジンドローン 元スズキエンジニアが開発 二輪技術、空へ応用

 自動車メーカー、スズキの元二輪エンジン開発者が共同代表を務める「アラセ・アイザワ・アエロスパシアル合同会社」(浜松市南区)が、排気量1000ccの産業用エンジンドローン(無人航空機)を開発した。市場では電動が主流だが、積載量や航続時間から用途が限られるのが現状。二輪エンジン技術を応用した「超無人機AZ-1000」は重量積載と長時間飛行を武器に、建設や防災など幅広い分野で“即戦力”をアピールしていく。

開発したエンジンドローン「超無人機AZ-1000」の特徴を紹介する荒瀬国男さん。手前は専用エンジン=2022年12月下旬、浜松市南区
開発したエンジンドローン「超無人機AZ-1000」の特徴を紹介する荒瀬国男さん。手前は専用エンジン=2022年12月下旬、浜松市南区

 エンジンと機体開発を手がけたのは、荒瀬国男さん(61)。スズキ時代に、人気バイク「ハヤブサ」など高性能二輪エンジンの開発に長年携わった。二輪レースの最高峰MotoGP(モトGP)のプロジェクトリーダーも務めた。
 AZ-1000は四つの回転翼を搭載した機体で高さ100センチ、長さ302センチ、幅286センチ、重さ110キロ。ガソリンエンジン(水冷、4サイクル)本体からギアで4本に分岐したシャフトの先にプロペラを配置。安定飛行のために専用の低振動化技術を採用した。回転を同期させてプロペラ軸間の距離を最短にするなど機体のコンパクト化と大幅な軽量化を図った。主要部品は地元の浜松地域で調達した。
 無積載時は6時間以上、150キロの荷物を運ぶ際は2時間以上の航行が可能。試算では、同じ重量物を運ぶ場合、電動に比べて10倍以上の航続時間を実現できるという。
 荒瀬さんは2018年にスズキを退職。培った技術の活用に向けて始動する中、「會澤高圧コンクリート」(北海道)の會澤祥弘代表と出会い、共同で会社を設立した。開発機は、長時間自律航行して映像中継を目指す福島県浪江町の防災支援プロジェクトなどに参画している。
 エンジンドローンは少数派ながら「災害時など長時間飛行が必要な際はエンジン型が現実的。普及の火付け役になれれば」と荒瀬さん。ドローンに限らず電動化の波が社会に押し寄せる中、「高性能なエンジン技術は日本の宝。技術をフルに生かして社会に役立つ製品を開発したい」と意気込む。
 脱炭素社会への対応として、内燃機関が生かせるバイオ燃料への切り替えを思い描く。引き続き、ものづくり産業集積地の浜松で開発を進める考えだ。

 <メモ>産業用ドローンは農薬散布や建物の点検、撮影、物流など、ビジネス利用や活用の検討が進む。国も「空の産業革命」の一つに位置付け、人口減や高齢化、人手不足などの社会課題の解決に資する取り組みとして利活用促進の検討を進める。ビジネス利用への期待が高まる一方、ドローンを使った物流などは多くが低積載・近距離での実施か、実証段階にとどまる。動力源は主にバッテリーによるモーター駆動の電動、バッテリーと発電用エンジンを組み合わせたハイブリッド、エンジンがある。

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