記者コラム「清流」 “幻”の興津鯛

 「世に名も高き興津鯛(おきつだい) 鐘の音ひびく清見寺…」。鉄道唱歌にもうたわれる興津鯛は、駿河湾産の1尺以上のシロアマダイの一夜干しのこと。徳川家康が好んだことでも知られる。
 魚店ごとに受け継がれる塩のあんばいや開き方が異なるという。静岡市清水区の興津地区にある古刹(こさつ)・清見寺門前の魚店「魚格」店主の男性(53)は「もっぱら贈答用」と話し、地元市場でもシロアマダイが買えるのは年に数えるほど。いまの時期が旬で年明けには20匹程度が並んだ。
 一般には老舗たい焼き店の「興津のたい焼」の方が有名かも。興津鯛にはなかなか巡り合えないが、「貴重」と聞くと地元紙記者として食べてみなくては、と変な義務感に駆られている。
 (清水支局・坂本昌信)

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