歴史共存の道へ 沼津の都市計画道「南一色線」整備工事本格化 橋、トンネルで高尾山古墳回避
沼津市の都市計画道路「沼津南一色線」のうち、市内の未整備区間1・1キロの工事が4月以降に本格化する。計画地は、東日本最古級の前方後方墳「高尾山古墳」があり、古墳の保存方法を巡っては、紆余(うよ)曲折があった。最終的には古墳をトンネルや橋で回避する形となり、2026年度以降に2車線での暫定供用、33年前後に4車線での完成を目指す。
高尾山古墳は08、09年の調査で3世紀中頃に築造された東日本最古級、かつ最大級の前方後方墳と分かった。市は調査のため墳丘を取り壊した上で道路整備する方針だったが、17年に道路整備と古墳保存を両立する方針に転換。東側2車線を橋で、西側2車線をトンネルで古墳を回避し、周辺は工事が進んだ28年度以降、公園として整備する。
未整備区間は国道1号江原公園交差点から、沼津東高近くの都市計画道路「三枚橋岡宮線」との合流点まで。道路の完成で、沼津駅から東名高速道沼津インターチェンジ方面へのアクセス向上や渋滞緩和が期待される。
既に古墳の前後の区間では工事が進み、一部で道路の輪郭が現れている。古墳近くでも橋の施工に向けた周辺道路の工事を開始している。
工事前に最後の説明会
沼津市は22日、高尾山古墳(東熊堂)の現地説明会を開いた。周辺は来年度から都市計画道路「沼津南一色線」の工事で約10年間立ち入りできなくなることから、県内外から約90人の考古学ファンが訪れた。
市文化財センターの木村聡学芸員が古墳の成り立ちや2008、09、14年に実施した発掘調査の成果を解説した。3世紀(230~50年ごろ)に築かれた高尾山古墳は、埋葬施設が未盗掘の状態で見つかり、青銅鏡や勾玉(まがたま)、土器など多くの遺物が出土したと説明した。
調査が進んだことで、同時期の古墳の設計に共通点があることや、沼津周辺で作られたとみられる土器が本州の広範囲で見つかったことが分かったとし、「当時の政治的、経済的ネットワークを思わせる」と語った。
出土品のレプリカや、古墳を避けて建設する道路の完成予想模型も展示した。