記者コラム「清流」 無機質の中の彩り

 機械が並ぶ無機質な工場に、色鮮やかな絵の具がまぶしい。広さや汚れを気にしないで制作できる「工場アトリエ」で油絵画家の北見美佳さん(36)が取り組むのは、縦3メートル超の500号のキャンバス2枚を合わせた大作だ。
 作品の題材は、戦争と新型コロナがある世界と自分。ロシアのウクライナ侵攻を受けテーマを変更した。「描くことは生きること」と語る北見さんは、この世界でどう生きて死ぬか考えてみたくなったという。
 「想像力が豊かになれば、人の痛みが分かるようになる」。北見さんは美術が想像力を養うと信じ絵筆を振るう。確かに自由に想像の翼を広げられることは、芸術鑑賞の楽しさだ。先行きが見えず不安な世界でも美術が救いであり彩りになると思いたい。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞