苦境の伊藤逆襲へ 全日本複プレーに光明 卓球女子シングル五輪争い 国内重視で過密日程

 日本卓球女子のエース伊藤美誠(スターツ、磐田市出身)が、パリ五輪シングルス代表2枠を争う国内選考レースで苦境に立たされている。折り返しとなった1月の全日本選手権は高校生に敗れて8強を逃し、2位から4位に後退。国際大会の合間を縫って選考大会が組まれ、心身ともにコンディション調整に苦しむ。勝負の2023年に、五輪金メダリストが逆襲を期す。

卓球パリ五輪代表選考で苦戦が続くエース伊藤美誠。後半戦での逆襲を期す=東京体育館(写真部・小糸恵介)
卓球パリ五輪代表選考で苦戦が続くエース伊藤美誠。後半戦での逆襲を期す=東京体育館(写真部・小糸恵介)
パリ五輪卓球女子シングルス選考ポイント上位
パリ五輪卓球女子シングルス選考ポイント上位
卓球パリ五輪代表選考で苦戦が続くエース伊藤美誠。後半戦での逆襲を期す=東京体育館(写真部・小糸恵介)
パリ五輪卓球女子シングルス選考ポイント上位


 「何のために戦っているのかな」。昨年3月の第1回選考会。5位に終わった伊藤はつぶやいた。1カ月前の全日本選手権で2冠に輝いた時の笑顔も圧倒感もない。東京五輪の激闘からまだ7カ月。早くも始まった代表争いに戸惑っているようだった。
 もう一つ、伊藤を困惑させたのは国際大会の成績で決まった東京五輪から一転、Tリーグの成績まで反映する国内重視の選考方式。ラバーが異質で戦型も多彩な日本人対策が必要だが、それは必ずしも最大の目標の「打倒中国」に直結しない。「海外で勝つのとTリーグで全勝するのとでポイント差がない。リーグを盛り上げたいんだと思うし、国内の層は厚くなるけど、海外の試合も絶対に大事」。疑問を抱きながらも過去4シーズン見送ってきたリーグ参戦を決めた。
 国際大会での存在感は健在だ。昨年10月の世界選手権団体戦は、早田ひな(日本生命)が故障を抱える中、日本代表をけん引。決勝の中国戦は世界女王の王曼と互角に打ち合い、チームで唯一1ゲームを奪った。
 だが、そのまま世界ツアーを転戦して迎えた11月の第3回選考会は6位に沈む。1カ月にわたる海外遠征から帰国して中1週間での強行軍。心身の疲労に加え、「国際大会で出た課題を練習したいのに、選考会への調整しかできない」とジレンマを口にした。優勝した平野美宇(木下グループ、沼津市出身)が、伊藤との準々決勝を見据え国内で1カ月間対策を練ってきたのとは対照的だった。
 今年は選考会のポイントが2倍。配点が高い世界選手権やアジア選手権もあり、伊藤にも逆転の道は十分に残されている。全日本選手権の女子ダブルス。盟友の早田と史上最多の5連覇を決めた決勝は、本来の変幻自在なプレーが戻りつつあった。「苦しい状況だが、他の選手は気にせず頑張れたらいい」。このまま、終わるつもりはない。

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