「鎌倉殿」大河館閉館 伊豆の国、今後の誘客へ 市民の結束力継続期待【解説・主張しずおか】

 伊豆の国市ゆかりの鎌倉幕府第2代執権、北条義時が主人公になった昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の世界観を伝える同市の大河ドラマ館が1月15日に閉館した。事業費を巡って市議会が予算を否決するなど紆余[うよ]曲折のあった施設だったが、最終的に来場者数は目標の10万人を大幅に上回る19万5838人となった。誘客に向けた官民連携の取り組みを継続し、今後のさまざまな事業に反映させてほしい。

大河ドラマ館の閉館日に来場者を見送るスタッフ=1月15日、伊豆の国市の韮山時代劇場
大河ドラマ館の閉館日に来場者を見送るスタッフ=1月15日、伊豆の国市の韮山時代劇場

 「大成功だった。このチーム力、団結力を今後のまちづくりに生かしていろいろなことに挑戦していきたい」。大河ドラマ館閉館後に施設前で行われた記念式典で、山下正行市長が今後への意気込みを語った。市民や市職員の尽力に対する感謝の思いも強調した。
 大河ドラマ館は昨年1月15日に開館し、358日間営業した。予算否決により事業費の確保がずれ込んで規模も縮小されたため、開館直後の昨年1~3月にツアー客を呼び込む難しさや出演者によるトークショーの取りやめなどの影響が出た。新型コロナウイルス禍の影響も受けたが、来場者数は着実に伸び、入湯税を基にした昨年10月の市内旅館利用者数は、新型コロナ禍前の2019年の同時期から2千人ほど増加するなど地域経済への好影響も見られた。
 多くの関係者が、来場者数が好調だった要因の一つに「市民の主体的な活動」を挙げる。大河ドラマ館併設の伊豆の国物産館では市内商工業者が中心となり、地元の特産品を販売して来場者に地域の魅力を伝えた。大河ドラマ館が設置された韮山時代劇場の広場では毎月、地元のイベント企画団体が手作り雑貨や飲食物などを販売するマーケットを開催し、にぎわいを生み出した。
 大河ドラマ館のスタッフは、小規模の施設であっても来場者に好印象を与えようと親身に応対し、閉館日には手作りのうちわを振って見送りを行った。市推進協議会の稲村浩宣会長は「郷土愛を胸に、関係者全員がおもてなしをしようという気持ちだった。多くの団体が協力する態勢が強まった」と喜ぶ。
 それぞれが特色を持った旧3町が合併して誕生した伊豆の国市で、大河ドラマ事業は市全体が一つの方向に向かって進む好事例となった。市は大河ドラマ事業を契機に生まれた誘客、歴史、地域活性化などの各種団体の連携を今後の地域づくりにも生かせるように、組織体制をより明確にする取り組みを始める。歴史や自然など一朝一夕には成り立たない貴重な資源を生かすには、市民の結束と主体的な取り組みが欠かせない。

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