ロボット分野 現場から学び 浜松城北工高「先生」にヤマハ発社員 地域産業の担い手育成

 ものづくり産業が集積する浜松地域で、今後の製造現場で導入が進むロボットの作り手、使い手となる人材を継続的に輩出し、産業力強化を目指す取り組みが始動した。浜松城北工高(浜松市中区)を拠点に、県教委、浜松市、世界的なバイクや産業用ロボットメーカーのヤマハ発動機(磐田市)の産学官が連携。ヤマハ発の社員を招き、実務に裏付けられた最先端の学びを得るのが特徴だ。

ヤマハ発動機出身の産業実務家教員南部秀樹さんの講義に耳を傾ける生徒=1月中旬、浜松市中区の浜松城北工高
ヤマハ発動機出身の産業実務家教員南部秀樹さんの講義に耳を傾ける生徒=1月中旬、浜松市中区の浜松城北工高

 1月、同校電子機械科の1年生40人のクラスで開かれた「ロボティクス序論」の授業。ヤマハ発ロボティクス事業部出身の南部秀樹さん(58)が、さっそうと教壇に立った。昨年7月から常勤の特別教諭「産業実務家教員」として勤務。世界の産業用ロボット販売台数が2009年から年平均14%伸長し続けている現状や、ロボットが稼働する仕組みの一部をかみ砕いて説明した。
 取り組みは文部科学省「マイスター・ハイスクール」の一環で指定は3年。最終年度の24年度に予定するロボット工学の新科目「ロボティクス概論」の開設準備を念頭に、学校側とカリキュラムの方向性を検討している。
 同校卒業生の約7割が就職する中、聴講した佐藤一輝さん(15)は「自動車業界で働きたい。現場で求められる能力など、高校で得た知識は強みになる」と前向きだ。
 産学官が連携する背景には、少子高齢化に伴う労働力人口の減少を背景に、予想される若手の人材不足、都市部への人口流出の懸念がある。浜松地域イノベーション推進機構が20年度に実施した西部のものづくり企業を対象にした調査で、ロボット導入の課題としてトップの「導入コスト」に続き、「ロボットを操作、保守点検できる人材の確保・育成」が上がった。産業界からは、早期の教育や人材が地域に循環する仕組み構築へのニーズが高まる。
 ヤマハ発で四輪バギー開発などに携わり、事業推進役「マイスター・ハイスクールCEO」を担う都築明宏さん(58)は「開発や操作だけでなく、ロボットを活用していかに課題解決につなげるかの発想力を育んでほしい」と期待する。
 (浜松総局・山本雅子)

 <メモ>浜松市は本年度スタートした「第2期はままつ産業イノベーション構想」で、次世代輸送用機器、光・電子、デジタルなどと並ぶ成長分野の7項目として、「ロボティクス」を加えて重点支援分野とした。
 ヤマハ発だけでなく、2023年秋に北区で工場が稼働する精密減速機「ナブテスコ」など、ロボットや部品のメーカーが立地する地の利も動機付けに、システムインテグレーターを含めた関連産業人材の育成・確保に結びつけたい考え。県教委は、ものづくり先進地の浜松地域をモデルに築くロボット人材輩出システムを全県に広げる構想を描く。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞