桜ケ丘病院(静岡)寄付呼びかけ 医療機器購入費5億円不足 移転新築、物価高騰で「やむを得ず」

 独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)が運営する静岡市清水区の桜ケ丘病院が、JR清水駅東口に移転新築する新病院で使用する医療機器を十分にそろえられなくなり、不足する購入費5億円の寄付を呼びかける事態に陥っていることが16日までに分かった。建築費の高騰によるもので、昨年4月就任の森典子院長(68)は「地域医療の使命を全うするため寄付を募ることはやむを得ない判断」と16日の取材に答えた。

JCHO桜ケ丘病院が移転するJR清水駅東口の土地=16日正午ごろ、静岡市清水区袖師町
JCHO桜ケ丘病院が移転するJR清水駅東口の土地=16日正午ごろ、静岡市清水区袖師町
物価高騰による厳しい「台所事情」を吐露する森典子院長=静岡市清水区桜が丘町のJCHO桜ケ丘病院
物価高騰による厳しい「台所事情」を吐露する森典子院長=静岡市清水区桜が丘町のJCHO桜ケ丘病院
JCHO桜ケ丘病院が移転するJR清水駅東口の土地=16日正午ごろ、静岡市清水区袖師町
物価高騰による厳しい「台所事情」を吐露する森典子院長=静岡市清水区桜が丘町のJCHO桜ケ丘病院

 移転先を巡り二転三転した桜ケ丘病院。JR清水駅東口に移転決定後も円安や物価高騰の波にもまれ、昨年の建築工事の入札は業者と価格面で折り合わず3回目でようやく成立。市との基本協定には2023年度中の開院が盛り込まれたが、早くても24年12月以降と後ずれしている。
 JCHO傘下の全国各地の病院は、自治体が損失を穴埋めする公立病院などとは違い独立採算が求められている。透明性の高い企業会計を導入する一方、民間金融機関からの借り入れは機構法で禁止される。JCHO本部からの借り入れと病院ごとの積立金が新病院整備の際の財源となる。
 桜ケ丘病院の場合、建築費が高騰し、シミュレーションを実施したところ、入札が未実施のMRIなどの医療機器や患者のベッドなどに回す資金が不足することが判明した。今年1月から市内の企業や民間の医療機関などに本格的に寄付を募る事態となっている。
 森院長は「ウクライナ紛争など想定外の事態に直面し、先々の経営が見通せない。市民にも寄付を呼びかけていきたい」とした。

 JCHO桜ケ丘病院の移転問題 1959年開院の桜ケ丘病院を巡り、2001年、旧社会保険庁は静岡市清水区大内新田に移転先の土地を取得したが、引き継いだJCHOは再検討。市役所清水庁舎跡地への移転を市と合意した。しかしその後に庁舎建設計画自体が頓挫、JR清水駅東口に病院移転が決まった。津波浸水域への移転経緯の説明不足を指摘する声があった。

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