御殿場線活性化へ SNSで情報発信 地域一丸で機運高めて【解説・主張しずおか】

 JR御殿場線の沿線市町でつくる協議会(会長・御殿場市長)は長年、御殿場線の利便性向上を鉄道事業者に要望している。同市幹部は御殿場線が使いやすくなれば「御殿場は首都圏の通勤圏内になり人口増加につながる。まちづくりへのインパクトも大きい」と期待を寄せるが、足元の利用者は伸び悩む。要望を受け入れてもらうため、地域の機運を高めてほしい。

御殿場市内を走行するJR御殿場線。利便性向上を期待する声は大きい=10日
御殿場市内を走行するJR御殿場線。利便性向上を期待する声は大きい=10日

 御殿場線は沼津駅と国府津駅(神奈川県小田原市)を結ぶ。途中の松田駅で小田急線に接続し、御殿場駅から新宿駅まで特急なら1時間45分程度、普通列車でも2時間15分程度で移動できる。
 要望事項の一つが御殿場駅―国府津駅間の運行本数増加だ。御殿場駅の1日の列車本数(平日、特急を含む)は沼津方面が35本なのに対し、松田・国府津方面は26本と少ない。
 特に不便とされるのが、東京から御殿場方面に戻る際の小田急新松田駅-JR松田駅の乗り換えだ。小田急線降車後、時間帯によっては御殿場線の列車待ちが数十分に及ぶ。そのため御殿場線の利用を避け、車で小田急線の駅付近まで赴く人が多い。
 御殿場駅と新宿駅を直結する特急列車の運行を、通勤通学客や観光客が利用しやすい時間にすることも要望する。小田急線普通列車の乗り入れも求めている。
 御殿場市によると、鉄道事業者側は採算性を課題に挙げ、利用者の増加が前提だと回答しているという。御殿場駅の2019年度の1日平均乗車人数は4948人で10年前とほぼ変わらない。営利企業である鉄道事業者を動かすには要望だけでなく、資本投下したいと思える環境づくりも必要になる。
 協議会は本年度、SNSによる御殿場線の情報発信を強化した。インスタグラムを使った写真コンテストを初開催し、優秀作品をポスターにする。御殿場市は沿線の活性化に取り組む団体への補助金を増やした。住民や年間1千万人を超す観光交流客に御殿場線を利用してもらえるよう、さらに知恵を絞ってほしい。
 新型コロナウイルス禍でテレワークが普及し地方移住への関心が高まった一方、出社に回帰する動きもある。御殿場線がより便利になれば、首都圏に近く富士山麓の自然豊かな御殿場や周辺地域の価値はさらに高まるはずだ。まずは要望活動を、住民を巻き込んだ運動に発展させたい。

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