県境に向けたボーリング開始 静岡県、JRに計画再考要請【大井川とリニア】

 静岡県は22日、リニア中央新幹線トンネル工事を巡りJR東海が山梨県で静岡県境に向けた高速長尺先進ボーリングの削孔(さっこう)を開始したことについて、自主的な中断を含めて現行計画の再考を求める要請書を送付した。

JR東海が2022年12月の県専門部会で県境付近の高速長尺先進ボーリングについて説明したときの資料
JR東海が2022年12月の県専門部会で県境付近の高速長尺先進ボーリングについて説明したときの資料
JRが同4月の専門部会で示した地質調査資料。トンネルルートの地下で山梨県側の破砕帯(赤い斜線部分)と県境付近の静岡県側の破砕帯(同)がつながっていると見て取れる(山梨側が左に描かれている)
JRが同4月の専門部会で示した地質調査資料。トンネルルートの地下で山梨県側の破砕帯(赤い斜線部分)と県境付近の静岡県側の破砕帯(同)がつながっていると見て取れる(山梨側が左に描かれている)
JR東海が2022年12月の県専門部会で県境付近の高速長尺先進ボーリングについて説明したときの資料
JRが同4月の専門部会で示した地質調査資料。トンネルルートの地下で山梨県側の破砕帯(赤い斜線部分)と県境付近の静岡県側の破砕帯(同)がつながっていると見て取れる(山梨側が左に描かれている)

 県はボーリングの削孔を始める前に、県内の地下水が流出する恐れが低いと考えられる区間を科学的根拠に基づき示すようJRに求めていた。
 要請書は、JRが20日付文書で示した回答は「懸念や要請に対する回答として十分とは到底言えない」と指摘した上で、地下水流出の懸念解消に向けた対話を速やかに行うよう求めた。
 具体的には、地下水流出の恐れが低い区間の提示のほか、ボーリングや山梨県内のトンネル掘削による湧水量を常時観測し、グラフなどで時間の経過とともに分かりやすく伝えたり、大量湧水が発生したときの対応を事前に取り決めたりすることを要請した。
 JRが同回答で、慎重な削孔を始める区間を「県境から約100メートル」とした理由についても、科学的な根拠が不足しているとした。

協議の中 突如「敢行」
 JR東海が静岡県の意向に反し、山梨県内のリニア中央新幹線トンネル工事で静岡県境に向けた高速長尺先進ボーリングの削孔(さっこう)を開始したことで両者の溝は一層深まった。県は、ボーリングの進め方についてJRと協議しているさなかの同社の行動に不信感を強めている。
 県は1月31日、県内の地下水流出の恐れが低い区間を科学的根拠に基づいて示すようJRに文書で申し入れた。以降、国土交通省が間に入る形で同社とメールのやりとりを続けていた。県によると、この間に県の担当者が、県境250メートル付近に確認されている山梨県側にある破砕帯と、県境付近の静岡県側にある破砕帯がつながっていると見て取れる資料がJRから過去に提出されていることに気付き、対応を求めていたという。
 JRへの不信感は資料の提出の仕方にも及ぶ。JRは2022年12月の県有識者会議の専門部会でボーリングについて説明した際、破砕帯がつながっている箇所が判然としない地図資料を提出していた。県の担当者は「重要な情報であり、早い段階で示すべきだった」と苦言を呈した。
 県専門部会の塩坂邦雄委員(地質専門家)は県境250メートル付近の山梨県側の破砕帯について、JRが示した地質調査資料の通り西側が下方に傾いていれば、県内の地下水流出の可能性は低いとみる。ただ、東側が下方に傾いていた場合、県内の地下水流出の恐れが高まるとして「余裕を持ち、県境300メートル手前から慎重に削孔するのが妥当」との見解を示す。
 JRは県にボーリング開始を伝えた20日付の文書で、「山梨県内で同様の地質状況の区間でボーリングを実施した際、湧水が少なかった」と記し、250メートル付近の区間でも地下水の大量流出は「想定しがたい」と反論した。県とは「意見を伺いながら必要な対応をしていく」としている。
 

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