富士山富士宮口5合目新施設 2029年以降に供用開始か

 静岡県が富士山富士宮口5合目に整備する来訪者施設の供用開始時期が、当初予定していた2028年から29年以降にずれ込む可能性が高いことが22日までに分かった。標高2400メートルと高地での作業であることに加え、噴石から登山者らの身を守るシェルター機能を施設に備えるのに「想像以上に高い施工技術が求められる」(県建築工事課)ためだという。県は設計段階から施工者の意見を取り入れる「ECI方式」の導入を念頭に、国内でも有数の技術力を持つ複数の施工業者から意見聴取を始めた。

静岡県が整備する富士山富士宮口5合目新来訪者施設
静岡県が整備する富士山富士宮口5合目新来訪者施設

 県は造成工事を23年度から始める予定だったが、基本・実施設計の策定が24年度にずれ込む可能性が高まり、着工も1、2年遅れる見通しになった。
 工事期間が1年のうち、5~10月の6カ月間に限られるほか、電源や水道もなく平地では考えられない悪条件がそろう。こうした中、壁の厚さ40センチと噴石に耐えられる堅固な構造の建物をつくる「前例のない工事」(同課)のため、県は民間の施工技術を最大限活用する意向。横田恭子課長代理は「完成すれば全国でも名だたる高地での建築物になる」と、慎重に事業を進める考えだ。
 施設は鉄筋コンクリート造4階建て。事業費約36億円。延べ床面積は物価高騰の影響で約1800平方メートルから約1600平方メートルに見直した。災害時避難、高度順応のための休憩など想定する機能に変更はない。

 <メモ>ECI方式 特殊な施工技術が必要な建築、土木関係の工事で、施工者が実施設計の段階から技術協力で参画する仕組み。設計の可能性が広がるほか、工期の短縮や建設コスト削減につながる効果もあるとされる。県がECI方式導入を検討するのは菊川市で計画する食肉センター整備事業に続き2例目。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞