災害デマ AIが見極め 浜松市、情報収集にSNS活用

 ツイッターやインスタグラムなど、日々膨大な量の情報が投稿される交流サイト(SNS)。自然災害の発生時には速報性や情報量などの“強み”が注目され、人々の暮らしを守るために活用しようとする取り組みが全国の自治体で進む。浜松市は2023年度当初予算案に関連費用として1千万円を盛り込んだ。悪質な投稿などで信ぴょう性の課題が指摘されることもあるSNSだが、どうすれば災害対策に効果的に役立てられるのだろうか。

AIが分析して表示した災害情報を確認する浜松市危機管理課の担当職員=2月中旬、同市役所
AIが分析して表示した災害情報を確認する浜松市危機管理課の担当職員=2月中旬、同市役所

 浜松市が導入を検討しているのは、SNS上に投稿された災害情報をAIが収集するシステム。「浜松」「洪水」「火災」など、場所や事象をキーワードで絞り込むと、関連する投稿を即座に分析して表示できるため、迅速な支援や避難情報発令の判断材料につながることが期待される。市危機管理課は2022年8月から同システムを試行中で、同9月の台風15号による豪雨被害でもSNS上の被害映像などが判断材料の一つとなった。
 災害時の情報収集にSNSを使う人は年々増加傾向にある。総務省によると、発災時にSNSを活用した人の割合は、11年の東日本大震災では0・9%だったのに対し、16年の熊本地震の際には47・6%まで拡大した。
 こうした結果を踏まえ、埼玉県川口市の危機管理課は、20年からAI情報収集システムを導入した。モニターに映し出された災害現場などの写真や動画をAIが分析したSNS上の投稿を適宜確認している。担当者の安村瑠宇人主事は「導入前は情報を得るために能動的な働きかけが必要だったが、情報がいち早く自然に入ってくるようになった」と評価する。一方、「SNSは投稿者が好きなように発信できるため、単独の情報をうのみにはできない。真偽には注意を払う必要がある」と強調する。
 発災時に悪質なデマ情報が拡散される問題はこれまでも繰り返し起きている。東日本大震災では「石油タンクが爆発した」、熊本地震後は「ライオンが動物園から逃げた」などのデマが出回った。22年9月の豪雨被害でも水没する集落のフェイク画像が流れた。
 こうした誤情報を見極める手段としてもAIが活躍している。過去にネットに上がった投稿と比較したり、画像に加工の形跡がないかを分析したりして、デマの可能性が高い情報をある程度排除することが可能だ。
 浜松市危機管理課はSNS情報と過去に起きた浸水被害などのデータの双方から判断しながら対応策を練ることを想定する。小林正人課長は「SNSに上がってこない被害もある。職員の目で実際に確かめることも重視しながら、市民の安全を守る対策に結びつけたい」と期待を込める。

 SNS「信用できる」3割
 NTTドコモのモバイル社会研究所が2021年10月に実施した調査によると、災害時にSNSで情報収集する人の割合は増えているものの、その情報に対して懐疑的に向き合う人が多い様子も浮かび上がった。
 調査は全国の15~79歳の男女計約9000人を対象とし、全体の約4割が災害時の情報収集の手段にSNSを活用していると回答した。特に10~20代では、7割近くがSNSを用いて情報を得ている実態が明らかになった。
 一方、SNSの情報を「信用できる」と答えた人は回答者全体の3割程度にとどまった。同研究所は「自治体から発信される情報など、別の方法と併せて収集し、情報の精度を上げる姿勢が重要」と指摘している。

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