磐田市 災害対応のシステム導入【遠州7市町23年度予算案③】

 台風15号が襲来した昨年9月23日夜、磐田市は被害の把握に悪戦苦闘していた。長時間続いた豪雨や多発した道路冠水で現地調査が行えず、参集できない職員もいた。本格的な調査に着手できたのは翌朝。危機管理課の担当者は「もし被害が大きくて通報もできない地域が出ていたら、救助活動が後手に回っていたかもしれない」と振り返る。

台風15号による豪雨で道路冠水や建物の浸水が多発した磐田市内。市は災害情報収集や被災者支援の迅速化を図る=同市今之浦
台風15号による豪雨で道路冠水や建物の浸水が多発した磐田市内。市は災害情報収集や被災者支援の迅速化を図る=同市今之浦

 市内では建物の浸水被害が840件に上った。市は多岐にわたる被災者支援メニューを用意。担当課以外の職員も投入し、罹災(りさい)証明の交付作業を急いだ。ただ、台帳作成など手入力の作業も多く、職員の負担は大きかった。市税課は「南海トラフ巨大地震など、もっと大きな被害が出れば交付が遅れてしまう」と危惧する。
 台風15号で浮かんだ教訓を捉え、市は2023年度に計2100万円をかけて、情報収集や被災者支援の円滑化に向けたシステムなどを導入し、災害対応力の向上を図る。新設ポストの防災戦略監には自衛隊出身者の登用を検討。災害現場での経験を生かす方針だ。草地博昭市長は施政方針演説で「安心できる暮らしを次世代につないでいく責任がある」と強調した。
 人工知能(AI)でSNS上に投稿された被害情報を自動収集するシステムは、被害が大きい地域の把握などに役立て、迅速な初動対応につなげる。被災者生活再建支援システムは、罹災証明の交付や被災者台帳の作成・庁内共有を効率化できるという。台風15号で被災者ごとに該当する支援メニューを手入力でリスト化した福祉課は「より正確に早く被災者に支援を届けられる」と期待する。
 堤防が決壊した敷地川の近くに住む桜田力さん(75)は、浸水した自宅の修繕が1月下旬に終わり、ようやく日常を取り戻した。今後の災害に備え「支援メニューごとに担当部署が異なるのでややこしい。窓口を一本化してもらいたい」と柔軟な対応を求めた。

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