静岡人インタビュー「この人」 ヤングケアラーを支援する元当事者の家庭教師 宮坂智恵子さん(沼津市)

 静岡県が本年度から始めた、ヤングケアラーだった元当事者が子どもの相談に応じるピアサポート事業で、学習支援を行うほか、講演会や勉強会の講師としてヤングケアラーの存在の周知に努める。「ミスどん底先生」と名乗り、家庭教師として活動する。横浜市出身。41歳。

宮坂智恵子さん
宮坂智恵子さん

 -ピアサポートとしてどんな活動をしているのか。
 「県の委託を受ける一般社団法人の活動に参加し、沼津、富士、御殿場の3市で学習支援している。家にいると手伝いをせざるを得ない子どもたちが集まっている。個別でつながり、学習だけでなく心の面や進学もサポートする。行政や学校などに向けた講演会活動も行い、自分の体験を伝えている」
 -「ミスどん底先生」とは。
 「母親がギャンブル依存症になり、幼いころから虐待や学校でのいじめを受けた。お金のない生活の中で、勉強もできず『どん底』の生活だったが、子どもたちのためになる家庭教師になろうと20代で独立した。経歴を知った知人がつけてくれたが、興味を持ってもらえるので気に入っている」
 -支援の課題は。
 「本当に困っている子は見た目では分からない。助けを求めてほしいが、親などからの報復を恐れて言えない子もいるし、手伝うのが当たり前でつらいと思っていない子もいる。包括的な支援が必要。ただ行政の制度が追いついていないのも実情」
 -今後の目標は。
 「とにかくヤングケアラーを知ってもらうこと。困っている子は今の苦しさがずっと続く、と考えてみてほしい。声を上げることで制度を紹介できたり話をすると気持ちが楽になったりする。元当事者だからこそできることだと活動している」

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