情熱の広告マン 静岡「サイラン」顧問、87歳栗林治雄さん 60年超第一線、業界に刺激

 4月に米寿を迎える静岡市葵区の広告会社「サイラン」の顧問、栗林治雄さん(87)は今もなお現場で活躍し続けている現役の広告マン。60年以上にわたり第一線に立ち続ける原動力は「仕事への情熱」という。常に時代に適応しながらモットーの「継続は力なり」を実践する姿が周囲に刺激を与えている。

笑顔で打ち合わせをする栗林治雄さん=2月中旬、静岡市葵区
笑顔で打ち合わせをする栗林治雄さん=2月中旬、静岡市葵区

 「仕事が好きだから」。自身の歩みを振り返る言葉はシンプルだ。1961年、大学の先輩の縁で静岡市内の広告会社に26歳で入社した。以来、自ら起業した会社も含め6社で勤務した。県広告業協会によると、栗林さんは現会員で最高齢。日本経済の激動にもまれながら、生き残りを模索する企業や地域に寄り添ってきた。
 広告を取り巻く環境は半世紀の間に激変したが、バス通勤中にほとんどの乗客が手元のスマホを見る光景を目にすれば、広告手法に活用できないかすぐに頭をひねる。後輩にデジタル機器の使い方を積極的に教わることもいとわない。前職時代から15年以上同僚の須藤元樹さん(46)は「これほど年齢を重ねても、新しいことを吸収しようとする姿勢はすごいとしか言えない」と敬意を表する。
 広告業の魅力を「多彩な業種から受ける刺激」と語る。時に衝突も経験しながら、誰とでも分け隔てなく付き合える性格を武器に、人や企業に向き合い信頼を築いてきた自負がある。映像制作会社カスタム(同区)の桜井信行社長(67)は広告主の立場から「常に消費者の目線で助言してくれる」と感謝する。
 「時代が変わっても広告の本質は『シンプル・イズ・ベスト』。消費者に届いてこそ広告」という信念を持つ。業界を担う後輩たちには「まずは自分自身を顧客に売り込んで、そこから信頼関係を築いてほしい」とエールを送る。
 今の夢は半生を書籍にまとめること。視線は穏やかだが、歩みを緩めるつもりはない。

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