廃水、恵みの肥料に 「カイゼン」副産物、地域へ提供 湖西のメーカー

 自動車用シート機構部品のTF―METAL(湖西市)はこのほど、磐田市の竜洋事業所の塗装ラインで出る廃水の肥料化に成功した。工場の「カイゼン(改善)」から生まれた副産物は地域貢献につなげようと、緑化団体や小中学校に無償提供している。コストをかけて処分していた産業廃棄物が、地域の花壇などを豊かにする“恵み”に生まれ変わった。

塗装ラインから出ている廃水=2月中旬、磐田市のTF―METAL竜洋事業所
塗装ラインから出ている廃水=2月中旬、磐田市のTF―METAL竜洋事業所
廃水を肥料化させた「工場の恵み」
廃水を肥料化させた「工場の恵み」
塗装ラインから出ている廃水=2月中旬、磐田市のTF―METAL竜洋事業所
廃水を肥料化させた「工場の恵み」

 廃水は自動車用シートのスライドレールの防錆(ぼうせい)性を高める表面処理後の洗浄工程で発生する。これまでは固形化し、年間4・5トンを産廃として数百万円かけて処分していた。
 肥料化は若手社員のアイデア。生産技術担当の竹腰心さん(33)がコスト削減を検討する中で、表面処理用の溶液に多く含まれるリン酸が肥料にも使われていると知り、会社に提案した。「埋め立て処理の現場を見て、産廃を減らすために何とか活用できないかと思っていた」と話す。
 肥料は廃水に薬剤を投入し、リン酸化合物などを抽出して乾燥させた。小松菜、ピーマン、ヒマワリなどを試験栽培し、一般的な肥料と同様の成長促進効果を確認。有害物質も検出されず、「工場(こうば)の恵み」の名称で国の肥料登録を実現した。
 磐田市に活用策を相談し、竜洋地区の緑化団体や小中学校への提供を始めた。阿部充宏製造部長(58)は「産廃を減らす活動が予想以上の成果になった。SDGs(持続可能な開発目標)につながる」と強調する。
 市を通じ、県立農林環境専門職大短期大学部の坂口良介講師(43)とも連携。トマトの試験栽培などで詳細な効果や使用方法を検証している坂口講師は「原料を輸入に頼っている肥料は価格が高騰している。他産業からのリサイクルで肥料を作る動きが広がれば」と期待する。
 同社は、竜洋事業所で肥料を緑化団体などに無料配布する。希望者は平日午前8時~午後5時に事業所<電0538(67)1110>に事前連絡する。

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