「運命」の水窪に魅せられて 手塚さん夫婦移住、民泊開業へ 4年目の挑戦 浜松・天竜

 浜松市天竜区水窪町で、山奥の集落に拠点を構えた東京都出身の男性がいる。手塚崇貴[たかき]さん(43)は初めて水窪町に訪れた3年前、特別な縁を感じて移住を決意した。現在はスポーツインストラクターと山仕事で生計を立てる中、民泊事業の準備に向けて汗を流す。手塚さんは「自然に囲まれた暮らしができて楽しい」と充実感に満ちあふれている。

手塚崇貴さんが暮らす浜松市天竜区水窪町の大沢集落。標高約750メートルに位置し、山間地ならではの景観を一望できる=2月中旬
手塚崇貴さんが暮らす浜松市天竜区水窪町の大沢集落。標高約750メートルに位置し、山間地ならではの景観を一望できる=2月中旬

 2月中旬の夜、同町の水窪総合体育館でキックボクシングのエクササイズのレッスンが開かれた。「もっと踏み込んで」「ワン、ツー、ワン、ツー」。手塚さんは昨年からレッスンを始め、水窪町や天竜区山東、春野町で指導している。インストラクターは前の勤務地だった東京で軌道に乗り、新天地でも想定に近い成果が出ている。現在は女性と子どもが対象で、習い事が少ない天竜区で人気を集める。
 水窪町との出会いは偶然だ。風水に詳しい知人が「南西に進んだ方がいい」と進言した。東京の自宅から南西の方角に線を引くと水窪にぶつかった。勢いに突き動かされ、下調べはしないで車で向かった。豊かな自然やきれいな水が魅力的に感じ、「運命を感じた」と振り返る。
 2020年3月、水窪町の中心部から車で約40~50分かかる大沢集落に夫婦で移住した。集落は標高約750メートルに位置する山に囲まれた地域で、たまに通りかかる車の音以外聞こえない静かな場所。手塚さんと妻めぐみさん(44)の2人で2階建ての古民家に暮らす。今春、古民家で民泊を始める予定で、宿泊客を対象とした林業体験など地域ならではのプログラムを設けたいという。
 都会から離れて3年が経過した手塚さん。「元々便利さを求めていないから来た。自然に触れると癒やされていく。都会の生活で失われていたものもきっとあるので取り戻していきたい」と話す。
 手塚さんはホームページ<http://studiomusubi.jp>に民泊の詳細を後日掲載する。

 大沢集落 浜松市天竜区水窪町の中心部から北上した山あいに位置する。標高約750メートルの集落で、現在4世帯6人が暮らし、茶や野菜などを生産している。唯一の農家民宿「時忘れの家 ほつむら」が1日1組限定で運営している。地元住民によると、かつては林業が盛んで、1940年代ごろには林業従事者を中心に70人以上が暮らしていた。約500年前は木工品を作る職人を指す木地師が住んでいたと言い伝えられている。

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