磐田市の地産外商 成功例積み、意識変えて【記者コラム風紋】

 磐田市は市内農水産物を首都圏などの大消費地に売り込む「地産外商」に力を入れている。磐田の地場産品を使った新商品やメニューが開発されるなど、成果が出つつある。販路を拡大しながら「磐田産」の知名度を高める発信を期待したい。
 市職員が“営業マン”となって都内などの青果店や飲食店を直接訪問し、生産者とのマッチングを図っている。地産地消や市場出荷以外の新たな販路を確保することで、生産者の所得向上につなげるのが目的。単なる販路開拓ではなく、大切なのは産品の価値を認めてもらい、品質に見合った価格で取引を実現することだ。
 これまでに青果店がエビイモや白ネギなど市内産野菜を使った冷凍ピザを開発・販売したり、レストランが市内で陸上養殖されたエビを使ったメニューを提供したりするなどの実績を上げた。こうした商品を通じて磐田産のファンが増えれば、継続的な取引も期待できる。
 昨年12月には、市内農園の冷凍イチゴを使ったスパークリングワインが首都圏のレストランなど14店舗で提供され、1本4900円の価格ながら、500本がわずか20日間で完売した。ワインの商品化に向けては、関係者を農園に招き、生産者のこだわりを説明したり、収穫を体験してもらったりした。こうした産地と消費地の顔の見える関係づくりが、販路を太いパイプにしていくだろう。大消費地ならではの商品開発のセンスやアイデアを地元に取り込むことも考えたい。
 最近は地方の食材を使用した商品開発戦略を進めるコンビニも出てきた。こうした企業の動きも捉えられればチャンスは広がる。採用されれば、これ以上ない宣伝効果を生む。最新の動向にアンテナを張ってほしい。
 地産外商は行政だけで取り組むことではない。市が成功例を積み上げることで、生産者が自ら発信、売り込みに乗り出す意識を持つように促すことが重要だ。市の取り組みを通じて、生産者に自分たちの産品の価値を再認識し、自信を持ってもらいたい。

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