遠州織物の未来 若手が守る 生産者とメーカーがタッグ 尾州産地に学び、逆風に活路

 静岡県西部の繊維産業の20~30代の担い手でつくる「ひよこのかい」と遠州織物のアパレルメーカー「HUIS(ハウス)」(浜松市西区)が、他産地との交流や上質な遠州織物の県外での魅力発信など産地振興活動を活発化させている。2月中旬には日本一の毛織物産地を掲げる尾州の一宮市(愛知県)を訪問し、若手による産地活性化の取り組みを視察した。後継者不在や廃業増加、コロナ禍と逆風の中、生産者とメーカーがタッグを組み、活路を切り開こうと挑戦を続ける。

遠州産地の「ひよこのかい」と尾州産地の若手が意見を交わした交流会=2月中旬、愛知県一宮市の「尾州のカレント新見本工場」
遠州産地の「ひよこのかい」と尾州産地の若手が意見を交わした交流会=2月中旬、愛知県一宮市の「尾州のカレント新見本工場」


 一宮の訪問先は、繊維企業で働く若手が立ち上げた自主サークル「尾州のカレント」。産地に新風を吹き込み、尾州の認知度向上に寄与したとして業界で注目される。活動拠点「新見本工場」で彦坂雄大代表(34)から、企業の垣根を越えた販売会や消費者が選んだ尾州生地を使った産地直送の服づくりなどの状況を聞いた。
 ひよこのかいで代表を務める古橋織布(浜松市西区)企画営業の浜田美希さん(32)は「外からも刺激を受け、変化を起こしたい」と強調する。2018年9月に始動し、織布や染色、糸、産元など各分野の後継者や従業員約15人が意見交換やPR事業を進めてきた。
 廃業などで産地特有の「分業の仕組み」の維持が難しくなる中、個々の事業所の生き残りだけでなく、「産地全体の盛り上げを考えなければ」と語る。
 産地発ブランドとして遠州織物のシャツなどを展開し、全国でファンを増やすHUISの松下昌樹代表(42)もメーカーの視点で産地振興に携わる。「消費者と生産者の接点づくり」が鍵と捉え、首都圏の百貨店や商業施設の期間限定販売イベントなどに、ひよこのかいメンバーの織物企業と共同出展する。松下代表は「生産者が、商品が売れる様子を見るとともに、消費者に直接説明することでモチベーションを高めてほしい」と期待する。
 浜松では、遠州織物の生地を選んでシャツを作るセミオーダー会開催も計画している。

 <メモ>経済産業省工業統計調査に基づく本県繊維工業の2019年の全事業所数(従業者3人以下の事業所の推定値含む)は664社で、00年の1907社に比べて約3分の1に減少。従業者数は6048人で、00年の1万5319人から縮小した。繊維産業集積地で織物製造加工が中心の県西部は、整経やサイジングなどの準備工程、織布、染色、仕上げ加工、縫製など各工程の分業制が特徴。一方、準備工程の事業者減が目立ち、分業のバランス維持が困難になっている。

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