焼津拠点にワサビ研究 誰でも栽培 実現目指す NEXTAGE代表/中村拓也氏【本音インタビュー】

 焼津市の製造機械メーカー本社敷地に、デジタル技術を駆使したワサビ栽培の実現を探る研究施設を立ち上げた。栽培にテクノロジーを取り入れることで、誰でもできるようにシステム化を狙う。研究目的や将来像について聞いた。

中村拓也氏
中村拓也氏

 ―具体的に何を研究するのか。
 「施設はメーカーの提供した広さ25平方メートルのコンテナ。気温や二酸化炭素(CO2)、照明といった指標を軸に、あらゆる条件に置くことで、最適な環境は何かを探っていく。成長管理システムを導入し、人工知能(AI)が撮影した栽培したワサビの画像データから成長度合いや剪定[せんてい]のタイミングを判定する。実証していく中で、適合していると判断したら、栽培技術として取り入れていく」
 ―デジタル技術を駆使したワサビ栽培。どのような将来像を見ているか。
 「栽培をシステム化することで、土地に依存しなくて済むようになる。ワサビ栽培は繊細で高い技術力が求められるため、ハードルが高いとして参入の機運がなかなか高まらなかった。私たちのシステムで必要な条件は、水と電気とインターネット環境。ネット環境が整っていれば遠隔で栽培指導が可能になる。専門的な知識がなくても、参入できる。ほしいワサビが、ほしい場所で、ほしい時に栽培できる。究極の姿で言えば、消費者が自分の好きなワサビを食べたいと生産者になってもよいと思う」
 ―農業ベンチャーの会社を立ち上げた理由は。
 「軽井沢で余暇を過ごすことが多いが、水が枯れ、道も荒れてしまい、ワサビ田が荒廃していく様子を見ていて、何とかしないといけないと感じた。海外では日本食ブームでワサビの需要が高い。にも関わらず、国内の栽培量がどんどん減っている。もったいないと痛感した」
 ―将来的な目標は。
 「海外ではワサビ生産に少しずつではあるが着手の動きが見られる。今手を打っておかないと手遅れになってしまう。国内でワサビ栽培は静岡、長野が二大産地。栽培をシステム化することで、全国どこでも栽培可能になり、産地の偏在をなくしていく。興味を持ってくれている人は多く、研究施設の訪問者が増えてくるだろう。焼津は魚だけではなく、ワサビもあると思わせれば、町に人が集うのではないか」
 
 なかむら・たくや プラント建設会社などを経て、2018年にNEXTAGE設立。本社は東京都目黒区。名古屋市生まれ。51歳。

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