沼津市議会 市民とつながる改革を【記者コラム湧水】

 沼津市議会を担当するようになって丸1年。取材を始めて最初に違和感を覚えたのが、一般質問での傍聴席の寂しさだった。一般質問は議員が市長に直接行政課題をただしたり、政策提言したりできる“見せ場”の一つ。これまで取材した市町議会では、登壇議員の支持者が、傍聴席を埋める光景をしばしば見てきた。
 当初は新型コロナウイルスの影響で市民が傍聴を控えていたのが定着したのか、と思っていた。だが、徐々にそうではないかもしれない、と気づき始めた。
 多くの市町議会は、一般質問の登壇者は質問項目、登壇日とセットで事前に公表される。しかし、沼津市議会は登壇者と質問項目、一般質問全体の期間のみが示され、どの日に誰が質問するのか明確には分からない。実際、3日間の日程が示されていても、2日目までに全て終了することもしばしばある。これでは、市民が議会に興味を持って直接傍聴しようと思っても、無駄足に終わる恐れすらある。
 市民の目が少ないからか、肝心の議論もやや淡泊に感じる。議員側の質問も、市当局の答弁も“安全運転”に終始する場面が目立ち、盛り上がりに欠ける。一般質問以外での委員会の発言などを見ていて、議員個々人の質問能力が低いとは感じないが、一般質問ではなかなか議論が深まらない。取材する側としても緊張感を持ちづらいのが正直なところだ。
 このような一般質問日程の公表の仕方は、ささいなことではあるが、議会の市民への姿勢が透けて見えるように思う。4月の市議選では、引退議員の後継を除いても、10人前後の新人が出馬の動きを見せている。市民にとって一番身近な「政治」であるはずの市議会と、市民がつながっていない不満の表れのようにも感じられる。
 市議選の告示まであと1カ月余り。現職、新人問わず、立候補者には、進めたい政策はもちろん、これから市民と議会をどうつなげていくのか、議会改革への思いや形も示してほしい。

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