北駿水かけ菜漬け 生産岐路に 法改正で施設改修必須 負担大、廃業考える農家も

 富士山の伏流水で生産される北駿地域の特産品、水かけ菜漬けの生産が岐路に立たされている。食品衛生法の改正で漬物製造業が許可制となり、許可を得るには施設整備が求められるため。個人で生産を続けてきた農家がコスト負担を敬遠して生産をやめる懸念が高まっている。

水かけ菜を塩もみする鈴木平作組合長。富士山の恵みと農家の丹精が込められている=3月上旬、御殿場市上小林
水かけ菜を塩もみする鈴木平作組合長。富士山の恵みと農家の丹精が込められている=3月上旬、御殿場市上小林


 改正法は2021年6月に施行され、24年5月までは経過措置期間。同年6月以降も生産を続けるには専用の製造室を用意し、手洗い用と器具洗浄用に別々の洗い台を設ける必要がある。
 水かけ菜は米の裏作。生産者の多くは米農家で、1~3月に収穫し、農作業小屋の一角で漬け込み作業をしている。御殿場小山水かけ菜生産組合の鈴木平作組合長(72)によると、組合員37人のほとんどが現在の設備のままでは許可を受けられないという。
 施設整備にかかる費用は数十万円から100万円以上になる可能性も。高齢化や後継者不在といった課題を抱えている生産者の中には、法改正をきっかけに廃業する考えの人もいるという。
 一般的には生産者が共同で設備を整備する手もある。だが、水かけ菜漬けは生葉をすぐに漬け込む必要があり、設備利用が特定の時期に集中するため、鈴木組合長は「自分で設備を用意するしかない」とこぼす。許可権者の御殿場保健所は「どうすれば基準を満たすか相談を受ける」としている。
 「明治時代から続く伝統の特産品を作り続けたい」と鈴木組合長。改正法に対する理解を深め、生産者同士で情報共有しながら継承の道を探るという。  特産品維持へ 知恵絞る地元  JAふじ伊豆御殿場地区本部によると、御殿場市と小山町の水かけ菜は、米とトウモロコシに続く地元における出荷量第3位の農産物。JAや自治体は特産品の維持に向けて知恵を絞っている。
 JAは4月に御殿場保健所の職員を招き、営業許可を得るための施設整備に関する生産者向け講習会を開く。生産継続の意向調査も行う。調査結果を踏まえ、JA施設の貸し出しなどの具体的な対応を検討する。
 同様の問題を抱える「いぶりがっこ」産地の秋田県と同県の市町村は、漬物を製造する農家の施設改修や機械購入費を補助する制度を設けた。北駿地域の生産者からも期待する声が上がる。御殿場市農政課は補助制度導入を含め、小山町やJAと連携して対策を検討するとしている。

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