臨床実習にVR 浜松医科大 患部立体的に把握

 浜松医科大(浜松市東区)の放射線診断学講座は、VR(仮想空間)ゴーグルを使った臨床実習に取り組んでいる。2次元画面では伝えるのが難しいカテーテル治療など医療技能の理解促進に役立てるのが狙いで、全国的にも珍しい試み。医療教育現場でもデジタルトランスフォーメーション(DX)が進み始めた。

五島聡教授(右)の指導を受けながらVRゴーグルを使った実習に望む学生=3月下旬、浜松市東区の浜松医科大
五島聡教授(右)の指導を受けながらVRゴーグルを使った実習に望む学生=3月下旬、浜松市東区の浜松医科大
VRゴーグル内に写った人体の立体画像(同大提供)
VRゴーグル内に写った人体の立体画像(同大提供)
五島聡教授(右)の指導を受けながらVRゴーグルを使った実習に望む学生=3月下旬、浜松市東区の浜松医科大
VRゴーグル内に写った人体の立体画像(同大提供)

 3月下旬、同大基礎臨床研究棟で五島聡教授(49)や講師の説明を受けながら、医学科5年の学生たちがVRゴーグルを装着し、関連機材を操作した。浮かび上がった人体模型のような立体画像は動脈瘤(りゅう)の症例から作られている。回転させたり臓器を取り外したりして血管がどうつながっているか、病巣はどこか、どんな治療が最善なのかを考えた。
 内藤龍仁さん(23)は「専門医が行っているようなCT(コンピューター断層撮影)から即座に病気を診断するというのはまだ難しいので、それができる先生たちとイメージを共有できるのは大きい」と感想を話す。
 「VR臨床実習」は症例を匿名化してクラウドサーバーにアップロードし、VRゴーグルを付けた講師と学生たちが立体画像を共有する仕組み。2021年度の国の「ウィズコロナ時代の新たな医療に対応できる医療人材育成事業」の採択を受け、ネットワーク環境などを整えて22年11月に開始した。脳外科や整形外科などでも利用できるよう準備中だ。
 同大によると、最新機器を導入した背景には、コロナ禍でも遠隔で学べる環境整備の必要性のほか、画像診断専門医の少なさがある。日本は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、同専門医が最も少ない。一方でCT用機材は比較的多く、大量の画像に対応できる人材の育成が求められているという。
 五島教授は「最近の学生はIT機器に囲まれて育ってきたこともあり、意欲的に学べている。専門医の感覚を早く身につけてほしい」と語る。

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