記者コラム「清流」 金曜日のソワレ

 今年初の夏日になった3月の夜、静岡市の繁華街。静けさが戻った深夜0時の青葉シンボルロード。通り中央のベンチからギターやドラムの音と女性の歌声が聞こえてきた。
-歌は自分でつくってるの?
 そう聞くと、ギターボーカルの彼女が答えてくれた。「重くない…深くない歌をね。メッセージや誰かの背中を押そうとかない。自分が気持ちよく歌える。この景色に合うような」。昼間は経理の仕事をしているという。金曜の夜になるとこのベンチに和太鼓と三味線奏者の3人で集まって思い思いに奏で始める。「じゃあ、もう一曲」
 「誰のためでもない」という彼女の歌が心地よかった。「ありのままで」と直接励まされるよりも。通りに響く週末の夜公演(ソワレ)はそっと誰かの背中を押している。
 (社会部・吉田史弥)

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