時論(4月2日)地球環境へ富士山頂から警鐘

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が「統合報告書」を発表した。ざっくり言えば、各国の温暖化対策は、現状では不十分、持続可能な地球環境にもっと危機感を、ということだろう。
 標高3776メートルの富士山頂。空気は薄いがきれいだ。その大気から、大陸の工場や東南アジアの野焼きで発生し、自由対流圏を運ばれて来たPM2・5(直径が2・5マイクロメートル以下の微小粒子状物質。1マイクロは千分の1ミリ)が検出されている。
 3月に開かれた認定NPO法人富士山測候所を活用する会の昨年夏の成果報告会では、大気だけでなく山頂の積雪や雲からマイクロプラスチック(MPs)を発見したという発表があった。
 ポイ捨てされたレジ袋や弁当容器、漁具などプラスチック製品が海を漂ううちに細かく砕かれて直径5ミリ以下になったMPsは、海洋生物の命を脅かし、人間の健康被害も懸念されている。海洋プラごみの量は、対策を講じなければ2050年までに海にいる魚の重さを上回るという報告もある。
 富士山頂で採集されたMPsは、海のそれより格段に小さく、花粉をサッカーボールに例えればコンペイトーくらい。目に見えず、吸い込めば肺の奥まで入り込む。
 大気中MPsの発生ルートは諸説あるが、人間の活動に由来することは間違いない。「雲にMPsが含まれていればプラスチックの雨が降り、農作物や飲料水を通して体内に取り込まれるかもしれない」と同NPO副理事長の大河内博早大教授は警鐘を鳴らした。
 政府の17年調査で、プラスチックごみ問題に「関心がある」と答えた人は約9割に上った。資源回収やレジ袋有料化など、脱プラが進んでいる印象はあるが、十分とは言えない。さらに一歩、地球規模の思考と行動が求められる。

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