記者コラム「清流」 「お告げ」の出る川
更級日記で富士川は「お告げ」の出る神聖な川として描かれる。住民が翌年の地方長官がだれになるか書かれた紙を川で拾い、それがぴったり合っていた、というもの。神々が集まって政治家の人事を決めているというのだ。
その富士川で初めて、河川環境保持のための河川維持流量が決まった。企業の水力発電用水利権が巨大過ぎ、一部区間で生態系保全のための最低ラインすらすぐにはクリアできず、10年ほどの猶予期間を設ける、との発表はいかにこの川が虐げられてきたかを示している。
「水返せ運動」を展開した流域住民のなかには住む県を問わず、涙を流す人がいた。時はまさに統一地方選。候補者には森川海の連環にも関心を持ってほしい。富士川の神様も見ているはずだ。
(清水支局・坂本昌信)