記者コラム「清流」 被災者が望む地域像は

 熱海市伊豆山の大規模土石流は発生から2度目の春を迎えた。流された住宅の跡地に咲く菜の花が月日の流れを残酷に物語る。「復興なんてしなくていい。とにかく元の生活に戻りたい」。土石流で母親と自宅を失った男性は、何カ月も変わらない被災地の景色をもどかしそうに見つめた。
 伊豆山が安全で快適な地域になってほしい気持ちはある。ただ、それは何年先なのか。このままでは「伊豆山に帰りたい」という思いが消えてしまうのではないか。男性はそんな不安な気持ちも吐露した。
 県や市は本年度から復旧復興に向けた工事を本格的に進める。だが、河川や市道の整備計画に疑問を呈する声が今も聞こえる。被災者が望んでいる伊豆山の姿とは何か。もう後戻りできないからと、強引に進めることはあってはならない。
(熱海支局・豊竹喬)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞