雪なし静岡県で開花 19歳三木つばき スノボ女子パラレル大回転で世界女王に
暴れるボードを全身で押さえ込み、19歳の新星が世界一のループを描いた。スノーボード世界選手権(2月、ジョージア)女子パラレル大回転。三木つばき(キャタラー、掛川市)は決勝のスタートゲートで「滑りたいように滑ろうと吹っ切れていた」。大荒れのコースも意に介さず、北京五輪2位のダニエラ・ウルビング(オーストリア)を追い込む。“雪なし県”静岡から日本アルペン界初の世界女王が誕生した。
滑るアイデア 静岡から生まれる 目標は3年後五輪で金
長野県で生まれ、5歳で掛川市へ。単身で山ごもりするなど雪を求めた時期もあるが、今は「雪から離れなければいけない時間が長いから、雪のありがたさを感じる」。新しいアイデアが浮かぶのは、意外にも静岡で過ごす時間。あんなふうに滑りたい-。次に雪上に立てる時を思い描くとトレーニングにも力が入るという。
1年前の北京五輪は決勝トーナメント1回戦で途中棄権した。昨年12月のワールドカップ(W杯)は3戦とも転倒。そこから目指したのは、荒れたコースで限界まで攻めても絶対に転倒しない滑りだ。コーチ不在の今季は技術指導を受けられない上、練習環境の確保にも奔走。1月末までW杯の表彰台に届かずくじけかけたが貫いた信念が大一番でものをいった。
世界選手権の決勝は二つ目の旗門でいきなりバランスを崩した。後に「バンクを使ってスピードに乗る作戦だったが、予想以上に荒れていた」と明かしたミスで出遅れた。だが、そこからはどれだけ雪面にボードがとられても、紙一重で踏みとどまる。「やってきたことは間違っていない」。両腕を突き上げゴールに飛び込んだ。
ただ19歳は日本人初の快挙にも冷静だ。2日後のパラレル回転は9位に終わり、「一つ優勝したから『世界一』という競技ではない」と自覚する。目標は3年後。「ミラノ(五輪)で必ず金メダルを取る。高みを目指していきたい」
みき・つばき 2003年6月1日、長野県で生まれ、4歳からスノーボードを始めた。最年少15歳で日本代表に選ばれワールドカップ(W杯)に出場。全日本選手権も史上最年少優勝を果たし、22年北京五輪に18歳で出場した。23年世界選手権はパラレル大回転で日本アルペン界初の優勝。世界ジュニア選手権も制した。日体大2年。19歳。