熱海市議選17人立候補 伊豆山地区の出馬なし 土石流風化懸念

 23日の投開票に向けて論戦が繰り広げられている統一地方選後半戦。熱海市では定数15の市議選に17人が立候補した。2021年7月に発生した土石流災害からの復旧復興を目指す伊豆山地区から出馬した候補者はおらず、災害の風化を懸念する住民は少なくない。立ち入り禁止になっている警戒区域は9月に解除される予定だが、避難先から帰還できる被災者は一部にとどまる見通し。復興までの長い道のりに「寄り添う」と訴える候補者に、住民は「有言実行を」と求める。

逢初橋のたもとで演説する熱海市議選の候補者(左)。地域に寄り添う姿勢を強調した=16日午前、同市伊豆山
逢初橋のたもとで演説する熱海市議選の候補者(左)。地域に寄り添う姿勢を強調した=16日午前、同市伊豆山


■復旧復興の道のり長く 住民「取り残されないか」
 4年前の市議選は伊豆山在住の候補者2人が当選した。しかし1人は任期途中に体調不良となり辞任。もう1人は自宅が被災し、今期限りで引退する。候補者不在となった今回、伊豆山は票を奪い合う“草刈り場”の様相を呈している。
 選挙戦が始まった16日、人通りが少ない逢初(あいぞめ)橋付近に立った現職候補は「誰よりも地域の声に耳を傾け、市政に届けます」と言葉に力を込めた。他の候補者も選挙カーから「皆さんと復興を成し遂げます」「住民に寄り添う市政を」と声高に訴えた。
 被災地近くに住む女性(70)は「地元の候補者がいないのは残念。このまま伊豆山が取り残されないか心配」と肩を落とし、「選挙の時だけ伊豆山に来るような人には投票しない」とつぶやいた。
 こうした声に候補者の1人は「もっともな意見だ。住民を裏切らないよう、伊豆山と市、県、国をつなぐ調整役として働きたい」と表情を引き締める。
 改選前の市議会は土石流に関する調査特別委員会(百条委員会)で、盛り土を巡る市の対応の不備を指摘し、「しかるべき責任を取るべきだ」と総括した。市が法的責任を否定する中、被災者の男性(56)は「犠牲者のためにも、再発防止を図るためにも、伊豆山の検証を続けてほしい」と次期の市議に期待した。
 ただ、市全体でみると、土石流に対する反応には温度差がある。別の候補者は「伊豆山以外の地域で復旧復興の重要性を唱えても反応が薄い。地域ごとに課題は異なり、当事者でないと分からない痛みもある」とこぼす。観光をはじめとした地域経済の再生、若者を受け入れる雇用や住環境の整備、高齢者の外出支援-と市民が求める施策は多岐にわたる。だが、「次の4年間も、伊豆山の復旧復興が市の最重要課題になることは間違いない。オール熱海で推し進めることに理解を求めていく」と強調した。

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