「相続土地国庫帰属」27日施行へ 所有者不明地を解決 静岡県司法書士会、認知向上図る

 一定条件を満たすことで、相続した土地の所有権を国が引き取る新制度「相続土地国庫帰属制度」が27日から施行される。来年4月には土地の相続登記義務化が始まるなど国の法整備に合わせ、県司法書士会は、制度の認知向上を図り、所有者不明土地問題の予防と解決を目指す。

制度の説明をする県司法書士会の井上尚人副会長=3月下旬、三島市
制度の説明をする県司法書士会の井上尚人副会長=3月下旬、三島市

 「実父から相続した土地をどうしよう」。県東部在住の男性が同会副会長の井上尚人さん(三島市)に相談を持ちかけたのは昨年秋。当初は土地の登記が目的だった。
 相続した土地は父方の出身地にあるが自身は縁遠く、子世代には固定資産税などの相続負担を残したくない。市街地から離れた場所だけに買い手が付く可能性も低く、管理負担も重い-。処遇に困る男性に井上さんが提案したのが同制度だった。
 制度の利用には、国への承認申請、審査を経て10年分の土地管理費相当額を納付する必要がある。土地を引き取る国の負担考慮や、管理責任を放棄する相続人が安易に制度を利用しないよう、抵当権の解消や境界の明確化を求めるなど条件設定は厳しい。
 一方で、相続登記未了などが主な原因で発生する所有者不明土地は公共事業や災害復旧の足かせになり、自治体にも影響を与える。同制度が適用されれば男性の事例や耕作放棄地を相続した場合など土地を自ら処分することが困難となった所有者の負担減につながるという。
 2020年の法務省調査によると、土地所有世帯の約20%が同制度の利用を希望しているなど潜在的な需要は高いという。
 同会は県内14自治体と、所有者不明土地や空き家問題解決に向けた連携協定を結び、相続登記推進を訴えている。3月末には「(法施行には)専門的知見を要する箇所も多く、司法書士が果たすべき役割は大きい」と声明を発表した。井上さんは「制度の認知向上が最優先。制度を知ることで、相続に困る土地所有者の相談が増えてほしい」と期待を込める。

 〈メモ〉県司法書士会は22日午後1時半から、「相続土地国庫帰属制度」の認知向上に向けた無料相談会を静岡市駿河区の県司法書士会館で開く。要予約。問い合わせは同会<電054(289)3700>へ。

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