記者コラム「清流」 猿に願いを

 浜北区宮口の庚申寺。山門には不見猿(みざる)、不云猿(いわざる)不聞猿(きかざる)の三猿に宝珠猿を加えた「四猿」が座る。宝珠猿はどんな願いもかなえる宝の玉を持っており、人の悪い部分を「見ない・言わない・聞かない」を果たせる素直な人の前に現れると伝わるらしい。
 三猿は、中国の道教を基に仏教や民間信仰などが絡み合った「庚申信仰」から生まれた。庚申信仰では、申(さる)が神の使いとされることがゆえん。場所によっては神に人間の悪行を告げ口しないように祭ったと解釈されるなど、いくつか伝えがあるようだ。
 どの伝承も願望が表れ、人間臭くて好きだが、この仕事をするうちは庚申寺の宝珠猿は現れそうにない。言い伝えに「『正当な理由無く』悪い部分を-」と条件が付いていることを願う。
(浜松総局・北井寛人)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞