静岡人インタビュー「この人」 台風15号で被災の庭園が復旧した清見寺住職 一條文昭さん(静岡市清水区)

 昨年の台風15号の襲来で住職を務める静岡市清水区の古刹(こさつ)・清見寺の庭園が被災。3月に半年ぶりに復旧工事が完了した。県内外の人々から励ましの声があり、感謝するとともに老朽化が著しい寺の保全にも気を配る。修行僧、愛犬と同居する。岩手県出身。65歳。

一條文昭さん
一條文昭さん

 -被災時の状況は。
 「ただならぬ豪雨の音に恐怖を感じた。2003年と14年にも裏山が崩れ、国指定名勝の庭園に土砂が流れ込んだが今回は過去最大規模。普段は小石が敷き詰められた庭は厚い泥に覆われ、乾いてひび割れした。励ましの声が救いだった」
 -どんなふうに復旧したか。
 「寺だけではどうしようもなかったが、国と県、市などの助成を受けられた。保存してあった図面を基に昨年12月から復旧作業を開始。庭園は奥まった場所にあるため、重機が入れない所は手作業で泥をかき出した」
 -どんな人に来てほしいか。
 「新型コロナ禍が一服し、清水港には外国クルーズ船が停泊するようになった。海外の観光客にも徳川家康ゆかりの庭園に足を延ばしてほしい。江戸時代の清見寺は日本と朝鮮王朝が友好を交わした舞台だった。外交資料『朝鮮通信使に関する記憶』はユネスコの世界記憶遺産に登録されている。寺は日本国内最多の48点を所蔵する。日本と朝鮮半島の関係に思いを寄せる人々にもぜひ来てほしい」
 -寺は老朽化が著しい。
 「かつて寺の前には清見潟と呼ばれた景観が広がっていた。皇族を迎えるため増築された『潮音閣』は明治期の代表的な別荘建築だが、床が傾くなどしている。こうした窮状も頭が痛いところだ。興津の文化遺産である清見寺を後世に伝えていく使命を果たしたい」

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