霊峰 土佐派と狩野派並ぶ 世界遺産センター登録10周年で記念企画展

 富士宮市の県富士山世界遺産センターは29日から、富士山の世界文化遺産登録10周年記念企画展「美と祈りの霊峰(やま)富士山」を始める。7月3日までの前後期制で、前期は土佐派と狩野派の江戸時代の絵師二大流派による富士山の描き方などを見比べられる。

土佐派と狩野派の富士山画=富士宮市の県富士山世界遺産センター
土佐派と狩野派の富士山画=富士宮市の県富士山世界遺産センター

 朝廷に仕えた土佐派からは、土佐光孚[みつざね]の「富士旭日図」を同センター初公開する。峰の横に赤色の丸い太陽を描いた構図は、現代人が思い浮かべる富士山の絵の源流に近いとされる。江戸幕府御用絵師の狩野派からは、狩野常信の「秋景富士三保清見寺図」を飾る。霊峰の広大な麓に三保松原と清見寺(静岡市清水区)が描かれ、紅葉や山頂の雪が秋の様子を表している。
 山頂を三峰型に描く狩野派に対して土佐派は四峰で、白く抽象的な山体が印象に残る。同センターの松島仁教授は「京都の土佐派は実物の富士山を見ることなく想像で描いた可能性がある」と話す。
 会場には、富士登山の途中の景色を描いた谷文晁の「富士山中真景全図」や鈴木其一の「富士越龍図」を含め日本画計12品が並ぶ。
 展示の前期は6月4日まで。後期は同月10日から、「祈り」をテーマに展示品を全て入れ替える。5月21日午後2時から1時間、松島教授による講座「徳川将軍と富士山」を開く。参加費無料で、希望者は同センター公式ホームページから申し込む。問い合わせは同センター<電0544(21)3776>へ。

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