「部活」廃止し「地域クラブ」へ 持続可能性見据え変革 掛川市

 学校の部活動を地域で展開する「地域移行」について、掛川市は静岡県教委を通じた国からの調査委託を受けて、2021年度から体制整備を進めている。佐藤嘉晃教育長は今年1月、市総合教育会議で「実質、部活動は廃止する。最終的に学校と切り離す」と述べた。26年度までに、公的な教育システムとしての部活動を、いわば「習い事」の一つと捉え、地域団体が管理・運営する「地域クラブ」に移行する方針だ。先進地の取り組みから見える実際と展望とは―。

中学校の校舎を使って行われた「掛川美術クラブ」の体験会=4月中旬、掛川市立西中
中学校の校舎を使って行われた「掛川美術クラブ」の体験会=4月中旬、掛川市立西中
部活動地域移行の課題(複数回答可)
部活動地域移行の課題(複数回答可)
中学校の校舎を使って行われた「掛川美術クラブ」の体験会=4月中旬、掛川市立西中
部活動地域移行の課題(複数回答可)

 国から部活動改革の方針が示される前から、教員の働き方改革の観点で中学校の部活動の在り方を模索してきた。部活動は教員の勤務時間外の活動と、わずかな手当によって支えられている。少子化の中では既に中学校ごとの部活動数に大きな差があり、市の調査では、小学生の4人に1人が「学区の中学校に入りたい部活動がない」と答えた。こうした現状から「学校部活動の枠組みでは持続不可能」と判断した。
 計画では、基本的に運動系種目を市スポーツ協会、文化系を市文化財団が事務局となってクラブを運営する。このほか必要に応じて市民発のクラブや保護者が運営するクラブも認定する。現在、部活動を受け持つ教員の半数が担当種目の経験がないが、教員の2割は部活動指導に意欲を示しているため、希望する教員の指導者としての起用も想定する。
 これまで水泳やプログラミングで実践研究を重ねた。今後種目検討部会を設置し、具体的な活動内容などを決める予定。市教委教育政策課の沢田佳史さんは「あまりにできすぎた学校部活動のシステムを変えるには、皆が当事者意識を持たなければいけない」と、市民を巻き込んだ意識改革を目指す。
 4月中旬、市文化財団が設立した「掛川美術クラブ」の体験会が市立西中で行われた。「影がうまく描けるようになりたい」「みんなと仲良くなりたい」―。保護者と共に集まった14人が、クラブでの目標を発表し合った。中学2年の町田翠さん(13)は「学校に美術部がなく、楽しみにしていた。デッサンに挑戦したい」と笑顔を見せた。
 市教委は移動負担の軽減や今ある施設の活用による経費削減を目指し、学校とクラブの運営団体、講師が契約を交わして学校施設をクラブ活動に使えるようにした。今回は施設管理を講師に任せた初めての試み。活動に取り組む児童生徒のそばで、沢田さんは「活動中に校舎入り口を開放したままでいいのか、など課題が見つかった。試行錯誤の連続です」と話した。

指導者選任、保護者理解…県内課題多く 静岡新聞調査
 部活動の地域移行に関して、静岡新聞社が県内の全35市町教委に行ったアンケートで、部活動改革に伴う課題を6項目示したところ、20市町が全てに該当すると答えた。
 提示した項目は▽活動場所の設定・確保▽指導者の選任・確保▽安全確保、不測の事態への対応▽運営や指導者確保に要する費用負担▽学校部活動と休日部活動の調整▽保護者理解。
 最も多くの市町が挙げたのが「指導者の選任・確保」。掛川市も課題の一つとし、人材確保に努める。「掛川美術クラブ」で指導する藤森美香さん(43)=同市=は、自ら講師に名乗りを上げた。美術の経験は高校の部活動だけだが、事務局の市文化財団は、劇団員としての活動や子育てを通じた工作や裁縫、料理などの経験を踏まえ「受験などのための美術教室ではないので、子どものやる気を引き出せるかを重視して採用した」。
 市内小学生への調査で、文化系ではプログラミングや調理、写真、科学、手芸などニーズは多様化していた。同財団の小田つとむ事務局長は「どれだけ応えられるか、手探り状態」と語る。
 会費や送迎といった受益者負担への理解をどう広げるかも多くの自治体の課題だ。中学生の娘がいる女性(51)=同市=は「きょうだいがいると送迎などの負担は大きい。例えば一つの種目を市内複数箇所で開催できるようにするなど、子どもの意欲をつぶさない方法を大人が考えていかなければいけない」と前向きに話した。

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