静岡スタイル貫き悲願 埼玉に86-81 バスケBリーグ 3部プレーオフ準決勝
バスケットボール男子Bリーグ3部(B3)の静岡(リーグ3位)は1日、埼玉県の浦和駒場体育館でプレーオフ準決勝第3戦を行い、86-81で埼玉(リーグ2位)を破って2勝1敗で初のB2昇格を決めた。
静岡は前半、アレクシス・エールセネル、ケニー・ローソンを軸に39-37で折り返した。第3クオーター(Q)は最大11点リードを一度は逆転されたが、タバリオ・ミラーのダンクなどで再逆転。第4Qは残り5分から岡田雄三のドライブ、山田安斗夢の3点シュートなどで振り切った。
静岡は6日から、岩手との決勝に臨む。
守備、リバウンド、速攻 ラスト5分 真骨頂
運命を決めるラスト5分の攻防に静岡の強さが凝縮されていた。守備で体を張り、ボールに食らい付き、走る-。最後まで築き上げたスタイルを貫いた。埼玉の捨て身のシュートが外れ、B2昇格を告げるブザーが鳴り響く。コートにオレンジの歓喜の輪ができた。
64-64で迎えた第4クオーター残り5分7秒。ミラーが埼玉のエース、シットンの決定的なダンクをたたき落とす。主将岡田がリバウンドを拾い、速攻からエールセネルがねじ込んだ。「守備からのリバウンド。これがベルテックスのバスケだ」とミュラー監督。今季のスタイルを象徴するビッグプレーでB2への道は開いた。
5人が2桁得点をマークした攻撃は、今季掲げた「全員バスケ」の真骨頂を見るようだった。第2戦まで徹底マークで6得点と苦しんだチーム得点王のエールセネルも復活の16得点。5人が連動して埼玉の守備をこじ開けた。
3月に上位対決で大きく負け越し首位から陥落。チームはばらばらになりかけたが、主将岡田は言った。「一度固まったチームをほどき、さらに大きくする」。その決意を大一番で体現し、涙が止まらない。
平日ナイターにもかかわらず、埼玉まで多くのファンが駆け付けた光景は、静岡にプロバスケを定着させようと奔走したクラブの5年間を物語る。地域に根ざし、B2へ-。悲願は成った。
山田 渾身のブザービーター
今季チームに加わった点取り屋が勝負を決めた。75-72で迎えた残り44秒、山田の3点シュートが鮮やかにリングに吸い込まれた。シュート制限時間残り3秒からの攻撃で渾身(こんしん)のブザービーター。勝負どころで真価を発揮した。
第2戦まで得意の3点シュートは2本だけ。相手守備に苦しみ試投数も少なかったが、最後の場面は「来たら打つと決めていた」。もどかしさから解放されたように、ど派手なガッツポーズを決めた。
最後はファウルゲームに望みを託した埼玉の希望を打ち砕くように、フリースローを4本連続で沈め大熱戦に終止符を打った。「静岡に来て良かった」。兄貴分と慕う大石と力強く抱き合った。
後輩、恩師が大声援 岡田の母校部員総立ち
最強の応援団が敵地のアリーナを“ホーム”に変えた。主将岡田の母校・沼津中央高のバスケ部員17人がスタンドに。埼玉ファンの声援をかき消すほどの大きな静岡コールで昇格を強力に後押しした。
現在は外部コーチを務める杉村敏英氏は同校で岡田、飛龍高で大石を指導。「静岡のプロチームでプレーしている教え子の大一番。子どもたちの励みにもなる」とマイクロバスで駆け付けたという。
上里颯慎主将(3年)は「岡田さんは憧れの存在。大事な試合で普段以上のプレーが出せるよう全員で声を出す」と、総立ちで盛り上げた。
【B3プレーオフ】
▽準決勝第3戦
静岡(リーグ3位)2勝1敗 86(16―18 23―19 16―17 31―27)81 埼玉(リーグ2位)1勝2敗
ベルテックス静岡の沿革
2018年創設の静岡エスアカデミア・スポーツクラブが前身。県社会人リーグ3部からスタートし、19年にB3に参入した。これまでの最高成績は3位。チーム名は「頂」を意味する。クラブ理念は「スポーツで、日本一ワクワクする街へ」。ホームタウンは静岡市。