修善寺紙への情熱再燃 地元有志の普及活動活発化 「100%地元産」へ原料栽培

 伊豆市修善寺で長く伝承される和紙「修善寺紙」の再興に向けた取り組みが活発化している。一時下火になっていた地元有志による普及活動は再燃し、企業の新入社員研修や観光客向けの体験プログラムに取り入れる動きも。「100%地元産」を目指し、原料となる植物の植栽も始まっている。「修善寺紙の文化を後世につなぎたい」。関係者は目を輝かせる。

特種東海製紙新入社員による紙すき体験=4月中旬、伊豆市の紙谷和紙工房
特種東海製紙新入社員による紙すき体験=4月中旬、伊豆市の紙谷和紙工房

 地元有志の「修善寺紙を再現する会」と、同市地域おこし協力隊の舛田拓人さん(31)は4月、「特種東海製紙」の三島工場に勤務する新入社員11人に修善寺紙作りを同市の「紙谷和紙工房」で伝授した。同社の研修での指導は約30年ぶりで、舛田さんの働きかけで実現した。参加者は修善寺紙の歴史を学んだ後、原料植物であるミツマタの黒皮をむく、蒸す、煮る、たたくといった作業を行い、繊維を取り出した。紙すきから乾燥まで、一連の和紙製造工程を体験した。
 参加者の一人、小財尚樹さん(23)は「修善寺紙を初めて知った。普段扱う紙とは違い、地元の伝統文化を知るための意義ある機会になった」と話した。
 同会は2017年からメンバーの高齢化で活動を休止。地元小中学校で恒例行事だった修善寺紙を使った卒業証書制作も中止されていた。19年に有志で活動を再開すると、卒業証書制作も一部の学校で再開。
 21年には協力隊として舛田さんも活動に加わり、同工房では昨年から観光客の紙すき体験も始めた。三須啓子会長(39)は「子どもたちには地元に誇りを持つ契機に、観光客には伊豆を好きになるきっかけになってほしい」と願う。
 同会は昨年、市内の休耕田で原料となるミツマタの植樹、トロロアオイの植栽を行った。舛田さんは「事業として成り立たせて世界に広めたい」と今後の展開を見据える。

 <メモ>修善寺紙 起源は定かではないが、平家物語に登場し、源頼朝の旗揚げ時に関東8州の武士に送った文書にも使用されていたとされる。江戸時代には徳川家康が好み、幕府の御用紙に採用された。狩野川支流の修善寺川(桂川)の清流が手すき文化を支えた。

 

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