土砂崩れで通行止め 浜松・水窪集落への林道、ようやく復旧 2年10カ月ぶり

 土砂崩れの影響で通行止めになっていた浜松市天竜区水窪町の林道天竜川線が4月末、約2年10カ月ぶりに開通した。幅4メートルの林道だが、山奥の集落と同町の中心部を結ぶ貴重なインフラ。住民からは「待ち遠しかった」と安堵(あんど)の声が上がる。

約2年10カ月ぶりに開通した道路=8日、浜松市天竜区水窪町
約2年10カ月ぶりに開通した道路=8日、浜松市天竜区水窪町
工事期間中、仮設の階段を使って移動する住民=3月上旬、浜松市天竜区水窪町
工事期間中、仮設の階段を使って移動する住民=3月上旬、浜松市天竜区水窪町
約2年10カ月ぶりに開通した道路=8日、浜松市天竜区水窪町
工事期間中、仮設の階段を使って移動する住民=3月上旬、浜松市天竜区水窪町

 2020年7月上旬の豪雨で、林道天竜川線の一部約50メートルが崩れた。林道の通行止めは、水窪町の中心部から車で約30~40分かかる塩沢集落と門谷集落の住民らの生活に大きく影響した。
 市によると、道路の地盤が想定と異なり、工法を変更したため、工期を約1年延長した。工費は国の補助金を含め1億6625万円。当初の計画より約7千万円多くかかった。
 市は土砂崩れの直後、工事中の道路を回避できる仮設の階段を設置した。医療機関に通う塩沢集落の住民は月2回、その階段を利用して道路をまたぎ、タクシーに乗り換えて医療機関へ行く日々を送った。
 同集落の筒井新治さん(82)は「早く直してほしいと思っていたのでうれしい」と話す。工事期間は生活が一変した。道路がふさがれた後、食品を買う時は1時間以上かかる長野県阿南町のスーパーまで通った。水窪町の中心部へ行く時は、長野県側まで回り、約2時間かけて険しい山道を降りた。筒井さんは「街に暮らした方が楽かもしれないが、山奥の方が静かで好き。塩沢に居続けたいと思う」と住み慣れた集落への思いを強調する。
 熊崎克佳さん(86)、秀美さん(81)夫婦は、塩沢集落の隣にある門谷集落の実家に通う。開通した今、ほぼ毎日通って茶摘みや農作業に汗を流している。夫の克佳さんは「コロナ禍の時期と重なったせいか(工事期間は)長く感じた。今まで住んでいた場所なのでこれからも通いたい」と話した。
 浜松市天竜森林事務所の大畑雅司所長は「工事がここまで長期化するケースは少ないが、土砂崩れが原因で通行止めになる可能性は今後もある」と指摘する。中山間地域の水窪町は地形が急峻(きゅうしゅん)で、大規模な土砂崩れに巻き込まれ、通行止めをせざるを得ない道路は多い。「今後も同様のリスクが発生しないとは限らない」と話す。

 <メモ>林道天竜川線は浜松市天竜区水窪町奥領家から長野県天龍村まで続く。静岡県境までの約20キロを県が1968~78年にかけて工事し、開設した。現在は浜松市が管理を担い、のり面や舗装を修繕している。塩沢集落と門谷集落の住民が主に利用している。

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