【D自在】「知るかボケ」と言われぬよう

 コラムの順番が回ってきて「書かなきゃ」とは思うが、「書きたい」と思うことは少ない。「書かなきゃ」と追い込まれ、冷や汗をかきながら考え、なんとか「書けそう」になる。
 書きたいという人は多いようだ。ネットメディアや交流サイト(SNS)は百家争鳴、玉石混交。ブロガー出身のフリーライターいしかわゆきさんは著書「書く習慣」(クロスメディア・パブリッシング)で、何より書きたい気持ちが大事だとしている。

  photo01 いしかわゆきさんの「書く習慣」
 この本でニヤリとしたのが、文章は「知るかボケ」と言われないように丁寧に書くというくだり。書き手にとって当たり前のことも、読み手は知らないことはある。「○○というのをご存じだろうか」という書きだし方があるが、読んでくれる人との間に壁をつくるようで筆者は使わないようにしている。
 書くことで、文章のなかに知らなかった自分が見えてくる、少しずつ思考が整理されてモヤモヤが晴れていくといういしかわさんの経験談は同感。言葉の恩恵だと思う。
  photo01 いしかわゆきさん
 文章化だけならチャットGPTなど生成AI(人工知能)にもできる。最近は活用と規制と、この話題で持ちきり。政府は急ぎAIに関する政策の方向性を議論する「AI戦略会議」を設置した。広島で19日開幕する先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも主要議題の一つになる。
 生成AIは、書きたいと思って書いていない。もっともらしいことを言うが、根底にあるのは「知るかボケ」かも。ご用心。AIの作文を理解できず、信じて疑わないようでは、それこそ思考と言語の深刻な危機ではないか。
(論説副委員長・佐藤学)

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