三遠南信自動車道 活路に生かす準備急げ【西部 記者コラム 風紋】

 浜松市と長野県飯田市を結ぶ約100キロの高規格道路「三遠南信自動車道」の整備が進む中、開通効果が期待されている。沿線地域の交流人口の拡大が見込まれ、浜松市天竜区佐久間町、水窪町など北遠地方では自然を生かした憩いの場や気軽に立ち寄れる店舗の充実が地域活性化の鍵となる。開通後の未来を見据えたアクションを地域全体で起こしてほしい。
 三遠南信自動車道の全線開通はしばらく先だが、直近では2025年度に鳳来峡インターチェンジ(IC)―東栄IC(延長約7・1キロ)が完成する予定だ。既に開通した前後の道路とつながり、浜松市の都市部から同市天竜区佐久間町の運転時間が大幅に短縮される。防災や医療面の貢献はもちろん、静岡県内外のアウトドア愛好家やツーリング目的の観光客が増えるだろう。
 この動きに合わせ、佐久間町の浦川地区で5月中旬、住民有志が週末カフェを立ち上げた。オープン初日は愛知県豊橋市や大阪など県内外から多くの客が足を運び、店内を埋めた。
 カフェを運営する浦川在住の男性は「三遠南信自動車道の開通前に『立ち寄れる場所がある』と周知したかった」と話す。のどかな自然の中で飲食できる空間を作ることで、浦川の魅力を広めていきたいという。さらに、地元企業と大学生らが協力して浦川を盛り上げる計画も今春から動き出した。
 同区水窪町と長野県飯田市の県境で工事が進む同自動車道の青崩峠トンネル(全長約5キロ)は、30日に貫通した。開通時期はまだ不明だが、複雑な道がトンネル1本に変わり、車で約30分の道のりが約6分に短縮される。4月下旬のトンネル見学会に参加した長野県上田市の男性は「交通面が便利になったら静岡に行きたくなると思う」と話した。
 開通の利点を生かしたい一方で、地域全体の動きはまだ小さい。休憩所やWi―Fi(ワイファイ)の設置も検討できるだろう。田園風景を好むインバウンド(訪日客)の対応や通勤圏の拡大による移住者の受け入れも求められる。同自動車道を地域の活路に生かす準備を一日でも早く加速させる必要がある。
 (水窪支局・大沢諒)

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