静大の最新衛星 いつ打ち上げ? JAXA失敗、学生研究に波及 募る懸念も「準備期間増えた」

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロケットの打ち上げ失敗など日本の宇宙開発計画の遅れが、静岡大の超小型人工衛星開発にも影響を及ぼしている。国家レベルではなくとも開発に参入でき、革新的な実証実験を宇宙空間で行うことができるのが超小型衛星の強み。だが、ロケットの打ち上げ自体が減れば、実験機会は減少する。静大生らは限られた学生生活の時間の中で貴重な研究機会が減ることに悔しさを募らせつつ、「準備期間が増えた」と切り替え、前を向く。

静岡大工学部が過去に開発した超小型人工衛星の実験機を見ながら最新機について話し合う同大の学生たち。「計画の遅れも前向きに捉え、入念に準備したい」=5月下旬、浜松市中区の同大浜松キャンパス
静岡大工学部が過去に開発した超小型人工衛星の実験機を見ながら最新機について話し合う同大の学生たち。「計画の遅れも前向きに捉え、入念に準備したい」=5月下旬、浜松市中区の同大浜松キャンパス
最新の静大衛星「STARS-X」のイメージ図(能見研究室提供)
最新の静大衛星「STARS-X」のイメージ図(能見研究室提供)
静岡大工学部が過去に開発した超小型人工衛星の実験機を見ながら最新機について話し合う同大の学生たち。「計画の遅れも前向きに捉え、入念に準備したい」=5月下旬、浜松市中区の同大浜松キャンパス
最新の静大衛星「STARS-X」のイメージ図(能見研究室提供)

 静大工学部は2021年1月に、6機目の超小型衛星「STARS―X(スターズエックス)」の開発を発表した。JAXAのロケットで衛星を打ち上げて、宇宙空間を浮遊する宇宙ごみ(デブリ)を捕まえる技術の確立に向け、実験を進める計画だ。
 「早ければ、22年中にも宇宙空間に放出」という当初の計画は大幅に遅れている。搭載するはずだったロケットが変更になったことに加え、JAXAは同年10月、イプシロン6号機の打ち上げに失敗。23年3月には次世代ロケットとして注目された「H3」初号機も指令破壊という事態に陥った。現状では、H3の2号機以降の打ち上げ計画は止まったままだ。
 スターズエックス計画の打ち上げロケットがどうなるかは不透明。開発を主導する同学部の能見公博教授は同衛星について、「打ち上げが決まりさえすれば、最終調整に入る段階」と打ち明ける。ただ、JAXAのロケットの打ち上げが減れば、今後の静大衛星の実証機会も確実に減少する。能見教授は「今は各国がどんどんロケットを打ち上げるので、日本としても立ち止まってはいられないはずだ」と期待感を示し、JAXAの動向を注視する。
 スターズエックスの開発は学生ら約10人が携わる。同大大学院2年の服部航平さん(23)は本年度で修士課程を修了し、就職する予定で「運用時の様子までは論文に盛り込めそうもない」と残念がる。一方、「打ち上げの遅れは、地上で試せる時間が延びたということ」と肯定的にも捉える。人工衛星は宇宙に放てば、修理ができない。服部さんは「念入りに準備を重ね、不安要素を一つでも減らしたい」と意気込む。

 <メモ>STARS―X(スターズエックス) 静岡大工学部が2021年に発表した6機目の超小型人工衛星開発計画。地上から500~600キロ離れた宇宙空間で、大きさ50センチ角の機体から内蔵のひもを伸ばして2機に分離させ、宇宙ごみ(デブリ)を模した模擬デブリを放ち、網で捉える実証実験を行う。宇宙ごみはロケットなどの残骸で、地球の周りを高速で周回している。運用中の人工衛星などに大きな被害を与える長さ1センチ以上の物だけでも50万個以上あるとされる。

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