起立性調節障害の不登校 理解と居場所づくりを【記者コラム 黒潮】

 「起立性調節障害(OD)」は自律神経系の異常で脳に血流がうまく流れず、立ちくらみや頭痛を起こす疾患だ。発症は小学校高学年から高校生までが多く、不登校の子の3~4割とされる。朝起きられず、授業時間帯と生活サイクルが合致しないためだ。こうした子の居場所がない現状を課題として示したい。
 静岡市内の女子中学生は数年前、ODで不登校になった。家族が無理に起こしたりしなければ午前11時ごろに目が覚め、布団の中で一定時間を過ごした後、起床する。両親は当初「一時的な症状」と受け止め、学校に相談して午後に登校させた。しかし、同級生の視線が気になったり、「ようやく来た」という言葉掛けを受けたりして、学校に行けなくなった。
 夕方以降に体調が良くなるため、親子は夜間学べる場所を探したが難航した。人間不信が強まり、学業の遅れを気にした生徒にとって塾や家庭教師は選択肢になかった。この先の進路は通信制高校や私立大が想定され、きょうだいもいる。両親は民間の施設に潤沢に支出することは現実的でないと考え、公的な学習支援の場を探したが「ほとんど見つからなかった」という。
 母親には何度か話を聞いたが、心理的に追い詰められていると感じる発言は多かった。今春開校した県立夜間中学についても「将来的に学ぶ場所ができたのに、現役中学生の娘は学ぶ場所がない」とため息をついた。県外で出席認定を行う「メタバース登校」や、特別な教育課程を組める不登校特例校の早期設置などを「切実に待っている人たちがいる。早く実現してほしい」と求めた。
 自律神経は心の影響を受けやすく、ODはストレス対策が重要だ。孤立して自己否定を加速させないようにするには、外部の居場所や他者の理解は欠かせない。今春、富士市で「起立性調節障害を地域で考える会」を立ち上げた小児科医の飯泉哲哉さん(同市)は「夜更かしだから朝起きられないのではなくて、起きられないから夜更かしになる。自宅で苦しんでいても外出できる時は元気そうに見える。その姿を『怠けている』などと誤解しない社会であってほしい」と訴える。
 (社会部・大須賀伸江)

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