平時の院内へ 一歩ずつ 家族面会再開や対策見直し 新型コロナ 5類移行1カ月 

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行し、8日で1カ月がたった。医療機関では家族面会の再開や感染対策の見直しなど「平時」に近づく試みが続けられる一方、感染対策の意識の鈍化や別の感染症の患者増加など新たな課題も指摘されている。

談話室で面会し、笑顔で話をする夫婦=8日午後、藤枝市の藤枝市立総合病院(写真部・二神亨)
談話室で面会し、笑顔で話をする夫婦=8日午後、藤枝市の藤枝市立総合病院(写真部・二神亨)


 「もう少しで帰れるかな」。家族面会を再開させた藤枝市立総合病院。入院中の夫がそう話すと、見舞いに訪ねた妻が目を細めて答えた。「頑張ってね」
 時間は15分間と限られるが、毎日開始時間になると、受付前には長い列ができる。感染管理室の認定看護師戸塚美愛子さんは「来訪者の受け入れは数年ぶり。医療者に感染対策の新たな負担は生じているが皆、前向きだ。患者に何が必要なのかが体感できた1カ月だった」と振り返る。コロナ対応は「平常運転」を見据えて徐々に変化している。院内各所から問い合わせが増え、戸塚さんは渡せる資料を携帯している。
 地域のクリニックでも「マスク着用を求める張り紙を外した」(小児科)など、平時に向けたさまざまな変化が聞かれる。その一方で、現状を不安視する声もある。
 静岡市葵区の内科医は「コロナを軽視する風潮を感じる」と打ち明ける。5月、検査が必要と思われる発熱患者が検査を断ったり、重症化リスクがある人がワクチン接種をためらったりする姿を何度か見た。「『コロナはもういい』という考えになりがち。自分が軽症でも、周囲の人の診断の遅れや重症化につながりかねないことを忘れないで」と警鐘を鳴らす。
 感染対策が強化された2020年以降、コロナ以外の感染症の患者は少ない状態が続いてきたが、5類移行により集団免疫が低下した状況下で対策が緩和され、別の感染症が流行し始めた。
 静岡市駿河区の小児科かわはら医院の河原秀俊院長は「発熱の受診が非常に増えた。いまコロナ患者は一握りで、別の感染症検査で陽性になるケースが目立つ」と現状を示す。市内の小児科医で共有する感染症データによると、葵、駿河区の医院1カ所あたりの平均患者数はコロナが0・72人と週に1人いるかいないかという状況に対し、胃腸炎患者は3・79人、ヘルパンギーナ患者は2・10人と多い。
 県の資料によると県内全体でも同様の増加傾向がうかがわれ、医療関係者は注意を呼びかけている。
 (社会部・大須賀伸江)

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