加速するCASE対応 供給網中小 変革支援を【西部記者コラム 風紋】

 電気自動車(EV)化や自動運転などの次世代自動車に関連する技術「CASE」対応の動きが世界で急加速している。技術開発の競争力向上へ、メーカー間の連携も活発だ。一方、サプライチェーン(供給網)を根底で支える中小の部品製造企業は、潮流変化への対応や行動力の差が広がりつつある。本県基幹の製造業の持続的発展には、一層企業の判断材料になる情報提供と寄り添う支援が必要だ。
 「自分の代は逃げ切れると構えていた。想定より進行が早く、向き合わざるを得ない」。浜松市で輸送機器部品加工に関わる中小企業の60代経営者は、国内外自動車メーカーが具体的なEVなどの市場投入戦略を打ち出す中で、焦りを隠さない。ただ、得られる情報が少ない中で、対応策は考えあぐねているという。
 浜松いわた、遠州の両信用金庫は2023年1~2月、管内の自動車関連中小製造業に実態調査(計579社回答)を行った。EVなどの普及影響を巡り、約4割が「危機」、約2割が「好機」と答えたが、前回17年時からこの割合に大きな変化はなかった。分析したしんきん経済研究所は「EV化は将来の危機から足元の危機に転じつつあるが、環境変化の対応は進んでいない」と指摘する。自身の企業回りの取材でも、原材料高や人手不足などの経営の制約が多い中、新たな研究や設備などの投資判断は困難を極め、諦めに近い声も漏れる。
 一方、次世代自動車ビジネスに関わる企業を1社でも多くと、支援機関も手を打つ。次世代自動車センター浜松(浜松市)は本年度、CASE新技術や部品試作など開発型の企業の支援と併せて、小規模企業の支援に着手した。企業との接点が深い地元金融機関と連携し、訪問による現場改善で経営体力の向上を図る。小規模企業の可能性を引き出す成功事例の創出と提示ができれば、「自社でもできる」という意識転換の動機づけにつながるはずだ。
 四輪、二輪の世界的メーカーが立地する本県は、メーカーと部品関連企業が地域密着の“共存”関係にある。本格的な次世代車時代の到来に向けて、サプライチェーン全体に目を配った本県ならではの支援態勢の構築に注目したい。
 (浜松総局・山本雅子)

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