台風15号被災の文化財資料救おう NPO会員ら作業 静岡県内初事例に注目

 昨年9月の台風15号で被害を受けた静岡平和資料館をつくる会・静岡平和資料センター(田中文雄センター長、静岡市葵区)の所蔵資料のレスキュー活動が、同市内で本格的に始まった。各地で「文化財レスキュー」の在り方について議論が進む中、県内では事実上初めての復旧活動。関係者の注目が集まる。

水損資料の乾燥作業を行うNPO文化財を守る会のメンバーら=静岡市葵区の西蔵寺
水損資料の乾燥作業を行うNPO文化財を守る会のメンバーら=静岡市葵区の西蔵寺

 4月上旬、同市葵区の西蔵寺で実施した活動には同センター関係者、NPO文化財を守る会(同区)の会員ら17人が参加した。被害を受けた資料は50リットル入りコンテナ4箱分。虫害やカビを防ぐために冷凍した写真、手帳、地図、史料コピーを一つ一つ解凍し、水で洗う。エタノールで殺菌し、キッチンペーパーで水気を取ってからアイロンや扇風機で乾燥させる。文化財保護のボランティア育成に取り組むNPOの友田千恵理事長は「(復旧の)技術的な面に問題はないが、想定以上に紙の材質がいろいろで、注意と工夫が必要」と、作業の課題を口にした。
 水損資料は、静岡市駿河区の図書館地下室に収められていた。地下室は台風の雨で床上約60センチまで水につかったという。同センターの田中センター長が被災2日後に現場入りし、水損資料を「廃棄」「救済」に分別。県博物館協会(事務局・県立美術館)に報告し、保管方法や復旧作業の進め方について助言を受けた。
 今後は毎月1、2回の乾燥作業を行い、今秋までの完了を目指す。作業場所を提供した西蔵寺の立花義彰住職はかつて、県職員として文化財防災に関わった。「復旧の取り組みは宿題として残っている」と指摘し、今回の作業をモデルケースとして重視する。
 県博協も今回の資料被災を受け、3月に自前の冷凍庫を購入した。事務局を担う県立美術館の新田建史上席学芸員は「作業報告をアーカイブ化し、今後の被災後の対策に役立てたい」と話した。

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